(華)『54』(フィフティー・フォー)

世のすべての遊び人の皆様、御機嫌如何でせうか?
わたくし、マダム・DEEPと申します。

七十年代の終盤から、八十年代へ掛けての「風俗」の移り変わりを描ひた作品
と致しましては、去年公開された『ブギー・ナイツ』が、ポルノ映画界に咲ひ
て……散つた方々への最高の供養となる映画でしたので御座ひます。

『ブギー・ナイツ』が加州ロサンゼルスのポルノ業界の話しであつたならば、
こちらの『54』は、紐州に御座ひました伝説のディスコの話しで御座ひます。

こと日本に置きましても、中々「ディスコ」の営業権は警察が許可を出さぬや
うで……その為に「倶楽部」が多くなりましたが……。

わたくしが、これを観た回が土曜日の午後五時からの回であり、その頃から普
段と客層が違ふのを感じておりましたが……映画が終わりましてロビーに出ま
すと、日曜丑の刻、渋谷の倶楽部「パイロン」前状態。(笑)
とにかく「倶楽部通ひ」これからですわよ。とやふ、殿方と女御の綴れ織。

或ひは、御酒と「舞ひ」と「女御」……そして「御薬」の冥府魔道を経て、健
全に一家を為してゐる殿御も居られましたが、わたくしの眼は節穴では御座ひ
ませんわよ……ちゃんと御顔に履歴が書ひてありますわ……ホホホ。

遅くなりましたが、映画の方の御紹介もしなくは為りませんわね。
1977年にニューヨークにオープンしたディスコ『54』は、ヴェルヴェッ
ト・コードが支配する御館でも御座ひました。著名人、王家、配管工迄……
客人は職業に因つて差別はされませんが、「美貌」と「才知」が無くてはこの
御館に入ることは出来ぬことに因りまして、一種のステイタスを確保して居た
ので御座ひます。
さうした眩ひ光に魅せられるやうに隣州のニュー・ジャージーの父子家庭で育
つてゐるシェーン(ライアン・フリップ)は、地元出身のモデルでゐらつしゃ
るジュリー・ブラック(ネーヴ・キャンベル御嬢様)が『54』で遊んでいる
とやふ記事を読み、友人と共に『54』迄行くが……選ばれたのはシェーン
だけでした。

そこでは、男色家の主人スティーヴ・ルベル(マーク・マイヤーズ様)が総て
を取り仕切り、日々狂乱の夜を送つておりました。
様々な客人が訪れる『54』でシェーンは、念願のバーテンダーの地位も確保
し、「シェーン54」とやう一時代を築くやうになる……しかし、時代の流れ
とルベルの「奢り」に因つて……破滅の淵は刻一刻と近づひているので御座ひ
ました……。

監督のマーク・クリストファー様は、どふも男色家のやふでせうが、中々に御
顔が可愛く、処女作とは思へぬ手堅ひ作りで魅了して下さひますわ。

ただ、此れが何故大傑作である『ブギー・ナイツ』には及ばなひのかと申せば、
主人公のシェーン様が未だ「俗世」への未練が残つてゐる普通の御方だからの
でせう……。
未だ、十九歳でこの世界に入り、二年間程しか居なかつた設定でせうので、仕
方無ひことも御座ひませうが……どふも、この方を見ると苛付きしか感じ無ひ
のですわ。

とやうのは、八十歳になつても、『54』で舞ひを続けてゐる老貴婦人が居ら
れるのでせうが……見事な迄の舞ひつぷりでせう……(うつとり)
その老貴婦人が……昼間の顔は御孫様がゐらつしゃり、夜は遊び人として絢爛
たる「毒の華」を咲かせてゐる……。(*^_^*)(ポッ)(*^_^*)(ポッ)

79年の大晦日のパーティで、グレース王妃もお出でになる時に、ある御嬢様
の歌ひぷりに魅了されて……舞ひながら、老貴婦人が倒れられるのでせう。

慌てて駆け寄るルベルとシェーン……彼女の為に一筋の涙を流すシェーン。
と……そこまでは良ひのでせう。ただ、わたくしには理解出来ぬのは、彼が
グレース王妃の接待をも投げ出して、その老貴婦人の元へ居たひとやうことな
のでせう。(--メ)

ルベル様は、「哀しむのは明日にしろ!」と怒鳴るのでせうが、誠に持ちまし
て正論でせう。(きつぱり)

その老御婦人がベッドの上で、家族に見取られて死ぬことよりも、『54』で
舞ひながら死んでゆく方がどれほど迄に求めて居たのかも解らなひとは……
バアテンダア失格ですわよ(毒)

彼女は……貴方の一筋の涙だけで満足なのでせう。この夜こそ、盛大に「供養
の舞ひ」をすることこそが……裏社交界に咲く毒の華の使命では無ひでせうか。
大往生これに尽きますわよ……。(超断言)

とまあ……彼の悪口しか書かなひのは何でせうが、他の方々の素晴らしさと言
へば……(うつとり)

薬漬けになり……大金は得られたものの……常に空しさを抱へてゐる御主人の
レベル様……札束をベッドの上に撒き、身体を撫でるのでせうが……その御姿
に人間の計り知れない「業」の深さと空しさを感じつつ一筋に地獄へ突き進ん
でゆく殿御のダンディズムを感じるのはわたくしだけでせうか?

小柄で有るが為に、中々ウエイタアからバアテンダアに昇格できず、恋人であり、
共に『54』で働くアニタ(サルマ・ハエッタ御嬢様)の歌手デビュウの為に店
の金をこっそりとくすねるグレッグ(ブレッキン・メイヤー様)

このグレッグ様のキャラクタア描写が素晴らしく、まことの花を咲かせてゐる
のでせう。(*^_^*)(ポッ)

そして……このブレッキン・メイヤー様でせうが……『シン・レッド・ライン』
でのウィット様を御演じになられたジム・カヴィーゼル様に次ぐ今年の収穫で
せう。(うつとり)

必ず、この方は大スタアになりますわよ……(につこり)

「裏社交界の徒花」 マダム・DEEP(HCD05016@nifty.ne.jp)
(7月3日 恵比寿ガーデン・シネマ1にて鑑賞)

BGM:Basement Jaxx『Rendez-Vu』(今年のハウスの収穫でせう)

「0〜9」で、はじまる映画の感想に戻る

「は」行で、はじまる映画の感想に戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送