(愛)『ブロークバック・マウンテン』

1963年のワイオミング州。イニス・デル・マー(ヒース・
レジャーさま)とジャック・ツイスト(ジェイク・ギレンホール
さま)は、ブロークバック・マウンテンの農牧場に季節労働者と
して雇われ、運命の出逢いを果たす。当時20歳の二人は、牧
場主のジョー・アギーレ(ランディ・クエイドさま)から、山
でキャンプをしながら羊の放牧の管理をする仕事を命じられる。
寡黙なイニスと天衣無縫なジャック。大自然の中でお互いを助
けあう内にお互いの心にある変化が芽生える。しかし……保守的
な土地とその時代ではお互いが結び合うには余りにも激しい
壁が立ち塞がっていたのでありました……。

小池真理子さまの『狂王の庭』(角川文庫刊)から登場人物の
一人が語る非常に印象的な言葉があります。自分にとりまして、
この言葉を抜きにしてはこの『ブロークバック・マウンテン』
を語る事が出来ないんですね。

「本当の色恋というものは、特別なものでございますから。
そこらにごろごろ転がっているようなものじゃございませんか
ら。親兄弟はおろか、神も仏も、生き死にですら、そんなもの
はどうでもよくなってしまうんでございますよ」


実を言えば、最初に観た時に非常に良く出来た映画だとは思いつ
つ、どうしても入り込めなかったのが、自由奔放なジャックの
想いは判るんですが、どちらかと言えばマッチョなタイプのイ
ニスが「本当の色恋」に陥るのか?其処が説明不足に感じたから
なのです。ですが……20年に渡る「大河浪漫」として観ると、
この映画大変に良く出来ている……ですから、わたくしの心も
イニスの様に、映画の中の過去と現在を行ったり来たりと、揺れ
動きが激しかったのです。
初見の日、「土曜日にもう一度観てから感想をアップします」と
書いたのは、そうした踏ん切りの付かないこの映画をもう一度
観て「お別れ」をする意味合いがあったのですが……。
二度目観て、全ての謎が氷解すると共に、この映画を本気で好
きになりました\(^o^)/












以下映画の内容に大幅に触れております。












一度観た時の違和感は、ある前提条件があったからなんです。
先程述べた「本当の色恋」に何故行ってしまったのか……。
それを解く鍵が、ジャックの妻ラリーン(アン・ハサウェイ御嬢
様)の台詞にあったのですね。

「ブロークバック・マウンテン。あの頃が一番楽しかったと彼は
言っていたわ。青い鳥が舞い、ウイスキーの川が流れる土地なの
かしら」

そうなんです。「本当の色恋」は、このブローク・バックマウン
テンで過ごした、あの時にしか存在して居なかったのです。その
当時は只楽しいとしか感じて居なかった事柄でも、後になって
みれば唯一無二の「失われた楽園」であったこと。

それから考えると、ジャックとイニスが再会して何度か逢瀬を重
ねても何となく余所余所しく、”限られた時間”である事を強調
し、初見で感じたイニスを囲む人間模様がやたらと丁寧に描きこ
まれている理由が漸く理解出来たのです。

非情な言い方をして仕舞えば、二人はブロークバック・マウンテ
ンを降りたその日から全く違う別々のレールの上を走らざるを得
なかった。そんなレールを再び一本にしようとしたのが、ジャッ
クの書いた4年後の葉書。しかし……その時には時既に遅し、
ジャックにもイニスにも結婚して子供がそれぞれ居たんですねぇ。
所謂婿養子で入った様なジャックに対して、イニスは日々の生活
に手一杯。それが故にジャックの計画も次第に狂い始めていく……

イニスと言うキャラクターも、ヒース・レジャーさまが主演男優
賞を数多く取得しただけありまして、これまた影がありまして、
9歳の頃にゲイ・フォビアの父親が手を下したリンチ殺人の事が
ずっと彼を縛ってしまっていた。それが故に自分の心情に対して
正直に為れない男です。彼自身が言う通り「負け犬」キャラなん
でしょう。一方のジャックを演じたジェイク・ギンレイホールさ
まは、自由奔放の裏には、自分を愛してくれなかった父への葛藤
と言う要因が大きなウェイトを占めているような感じが致しまし
た。

肝心要な事は敢えて書きません。この映画にも「大河浪漫」とし
て欠かせない「アイコン」が一つ存在するのですが、終盤近くに
なりまして二回登場致します。一回目の「発見」のときと、ラス
トの「重ね方」に御注目下さい。ここにイニスのほんとうの気持
ちが秘められていると自分は信じております。

蛇足かも知れませんが、アカデミー賞の事についても触れておき
たいですね。本命と目されていた「作品賞」は受賞を逃しました
が、男女間の許されぬ恋を描いていた作品だったならば、まず間
違いなく獲れた筈です。監督賞のアン・リーは当然の受賞。
脚色賞、音楽賞と3部門受賞しておりますが、個人的には、撮影
賞が何故獲れなかったのがが不思議で仕方ありません。
撮影のロドリコ・プリエトさまに栄光あれ!

最後になりましたが、この映画に携わった全ての方々に感謝の念
を捧げます。2006年度ベスト1候補が決まりました。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2006年3月8日、2006年3月11日 シネマライズ渋谷にて鑑賞)

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