(共)『善き人のためのソナタ』

時は1984年、東西冷戦下の東ベルリン。国家保安省(シュタ
ージ)大尉のヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエさま)は、劇
作家のドライマン(セバスチャン・コッホさま)と舞台女優であ
る恋人のクリスタ(マルティナ・ゲデック御嬢様)が反体制的で
あるという証拠をつかむよう命じられる。成功すれば出世が待っ
ていた。しかし予期していなかったのは、彼らの世界に近づくこ
とで監視する側である自分自身が変えられてしまうということだ
った……。

この映画を撮ったのが、若干33歳でこれが長編監督作デビュー
と言うフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクと言う
やたらと長くて覚え難い名前の監督さんですが、『シティ・オブ
・ゴッド』でブラジルの新鋭フェルナンド・メイレレス監督の名
前を覚えた様に記憶に留めて置いた方が良い才人の誕生です。

この映画、「権力とたたかう良心」と言う見方が大半ですし、そ
れは間違ってはいないんですが、自分は「良心」だけでヴィース
ラーが動いたのでは無いと思っています。言わば体制側の従順な
る彼は、自分とは正反対のタイプである劇作家のドライマンと、
舞台女優であるクリスタの関係を盗聴している内に「共犯者」と
なる背徳の喜びを感じていたのでは?と思ったのですよ。

自分とは正反対の者に強く惹かれ、また反撥してしまう心境は、
ヴィースラーのみならず、誰もが持っている感情でしょうし、
「四十にして惑わず」とは孔子先生の教えですが、40歳を過ぎ
て工作員養成所で同期だった人間が権力に上手いこと取り入り、
自分よりも格が上の中佐となっていたり、また盗聴が終わって
アパートに戻っても、パスタにレトルトのミートソースを掛けて
一人食べるだけの虚しい生活。金を払ってコールガール(東ドイ
ツにも居たと言うのが驚きでありましたが……)と言う下りは
身に詰まされてしまい。ウンウン判る判る……と頷いて仕舞った
程のリアリティがあります。そんな中年男が通した些細な反抗
がドライマン達が盗聴されていないかを調べる為に仕組んだ罠を
見逃していくことであり、物語が進んで行くにつれて「共犯度」
は更に加速していく様がスリリング。
その心境の変化を眉一つ動かさずに静かに演じ切ったウルリッヒ
・ミューエさまが圧巻の演技。最後の最後でやっと表情らしい表
情を示すのですが、抑えに抑えていただけあって実に効いていま
す。

この映画で重要なテーマの一つとなっている「東ドイツでの自殺
者のデーターの公開差し止め問題」ですが、まだまだ東ドイツは
可愛いものです。北の将軍様が支配する北朝鮮では「地上の楽園」
が国是の為、「自殺」はあってはいけないことなんですね……。
どの位過酷かと言えば、自殺した人の親族は、間違い無く強制
収容所送りとなり、生きても死んでも出る事は出来ません。(--;)
これじゃぁ……死んだほうがマシ(^^;と感じるのは自分だけなん
でしょうかねぇ……。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2007年4月14日渋谷シネマライズにて鑑賞)

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