(海)『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ』

沖縄美ら海水族館に意気揚々と赴任した新米の獣医
・植村一也 (松山ケンイチさま)を待っていたのは
飼育員の作業。それは イルカのことをよく知らなけ
れば治療はできないと考える福原館長(山崎務御大)
の方針だった。理想と現実のギャップに思い悩む日々
の中で、3頭の子どもを産み育て「ビッグマザー」の
異 名をとるフジの尾びれが壊死し始める。
尾びれを切除し一命はとりとめたものの、フジは泳ぐ
ことをや めてしまう。一也は人工尾びれを作ること
を提案するのだが……。

植田啓一獣医と沖縄美ら海水族館の面々が、タイヤメ
ーカーの ブリジストンと組んで挑んだ世界初の人工
尾びれ再生プロジェ クトという実話が原案なんです
が、実に丹念に作られています。
まず名前は変わっているものの、主人公の理想と現実
に悩む 姿が描かれ、そしてその「青さ」故、他のベテ
ラン飼育員の比嘉(池内博之さま)やユリ(坂井真紀
御嬢様)と対立する構図が一つ。母親が本土に一人で
行ってしまい、祖父と共に暮らす少女ミチル(高畑充
希御嬢様)とフジの交流物語があり、祖父と館長との
物言わぬけれども判り合える関係が基底にあって、フ
ジの尾びれが壊死してしまった事により、ブリジスト
ンの技術者と組んで 人工尾びれを作る事にも「プロ
ジェクトX」顔負けの「もの作りのドラマ」がある。

何度か日記には書いている事なのですが、自分は大半
の歯を失って現在入れ歯にて生活をしております。こ
んな小さなものでも、体に異物が入ると言う違和感は
予想以上のものでして、口に入れて一週間は馴染まず、
吐き気を催してしまった事すらあります。そんな訳で、
泳ぐ為の尾びれを失ってしまい、人工尾びれを着けな
くては為らないフジの苦労も身につまされて判る部分
があるんですよね。義手や義足で生活をしている人に
とっては他人事ではない切実さがあると思う訳です。

その人工尾びれを作るのが、ブリジストンなんですが、
最初は戸惑いを隠せなかった技術者も、自然の生み出
した「機能美」に魅せられて、水の抵抗が少なく、壊
れにくい上に、身体を傷つけないと言う難関をクリアー
していく過程が非常に面白いし、技術屋の端くれとし
て大いに共感するところが多いです。

また、山崎務御大演じる館長も出番は少ないものの強
烈な存在感を残します。現場が好きだけれども、止む
を得ず管理職になってしまった男の生き様が巧く表現
されていて、事に人工尾びれをつける際のスピーチに
「人工尾びれを作るのが目的ではなく、これをつけて
どう変化したのか、そのデーターを取得して後世に伝
えることが世界初と言うことの意義だと思う」との御
言葉には心底痺れました。『アポロ13』のエド・ハ
リス以来の管理職の鑑と呼ばせて頂きましょう。

と……つらつらと書かせて頂きましたが、この映画に
は「事実を基にした映画化だから……」と言う甘えの
部分が皆無でして、無駄な登場人物や無駄な台詞が一
切ございません。実話の映画化はかくあるべきと言う
見本として推薦させて頂きます。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2007年7月8日シネプレックス幕張にて鑑賞)

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