(火)『ドレスデン、運命の日』

1945年2月、冬のドレスデン。若い看護婦アンナ
(フェリシタス・ヴォール御嬢様)は、父の経営する病院に
て負傷兵を救うために必死で働いていた。多忙な毎日の中
では、若い外科医アレキサンダー(ベンヤミン・サドラー
さま)との婚約でさえ心待ちにできないほどだった。ある
日、アンナは1人の兵士が病院に隠れているのを見つける。
ドイツの脱走兵だろうと思い、そのまま匿う。後に彼が負
傷したイギリス兵ロバート(ジョン・ライトさま)だと知
るが、それでも彼を見捨てることはできなかった。この勇
ましく若いイギリス兵と恋に落ち始めていたからだ。イギ
リス軍によるドレスデン空襲が始まり、アンナは命がけで
ロバートを守ろうとする。大爆破は去るが、ドレスデンは
廃墟と化してしまうのでありました……。

ええっと……実はもう一本の筋があって、ユダヤ人の夫
ジーモン(カイ・ヴィージンガーさま)と、その奥様マリア
(マリー・ボイマー御嬢様)のエピソードが横軸となって
展開しているんですが、このエピソードが話としては秀逸
で切るには切れない話だったのですが、全般的に見渡すと
散漫になってしまう危険性を秘めているんです。
この映画の感想を検索してみても、「御都合主義」とか、
「エピソードが絞り込めていない」と言う指摘があって、
それが当っているだけに此方としては心苦しいのであります。

ですが……この映画、そんな批判をも跳ね除ける真正面から
の強さがあるんです。それは何かと申しますと、題名の通り
ドレスデンと言う街が一晩で廃墟となってしまったと言う
動かしがたい史実があるからなんですね。
その史実を描きたいが為にドラマの部分を作っている感じす
ら受けます。普通でしたらここで罵詈雑言モードの嵐となる
のですけれども、この空爆シーンの惨状が余りにも凄いので
すわ。1945年3月10日には東京大空襲があり10万人
の人命が失われたのですが、このドレスデンでも少なくとも
2万人の遺体が回収されています……。
で……驚いたのが、火災旋風の描写こそありませんでしたが、
非常に猛烈な風が吹いていたことと、避難壕での一酸化炭素
中毒死等の事象がリアルに描きこまれていて、パニック映画
を見慣れている自分ですらその描写に戦慄を覚え涙した程な
のです。

そう……この映画は、「反戦映画」以外の何者でもありませ
ん。ドレスデンに爆撃を加える飛行士の一人が、「ヨハネの
黙示録の騎士となって、この街を焼き尽くしてやる」と意気
込んでいると、それを諌める飛行士仲間が居ります。ですが、
その暴言を吐いた飛行士の姉はドイツ軍の空爆により焼き殺
されたと言う過去が明らかになる……そう、どちらの言い分
も正しく、そして間違っているのです。報復は報復を産み、
怨念の連鎖は留まることを知りません……。

最後の最後にドキュメンタリー画像が流れ、平和と復興の尊
さを呼びかけますが、このメッセージに素直に頷く事が出来
るのはそれまでの空爆シーンが余りにも凄惨なものだったから
なんですね。
敗戦国が作った映画ですが、敵国の兵士に対する心情もキチ
ンと織り込まれ、その意味でも非常に好感が持てる映画の一
本となりました。

初代「大河浪漫を愛する会」
  「パニック映画友の会」大倉 里司
(2007年4月29日日比谷シャンテにて鑑賞)

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