（筋）『神に選ばれし無敵の男』

時は１９３２年の５月。ナチス台頭下のベルリン。ショー・ビジネスの世界
に彗星のごとく現れた二人の男の奇妙な関係。ヒトラーの千里眼として頭角
を現したハヌッセン（ティム・ロスさま）と、現代のサムソンとなるべく命
を受けたユダヤ人鍛冶屋の心優しい青年ジシェ（ヨウコ・アホラ）。
そして………彼ら二人から愛されたヒロインのマルタ（アンナ・ゴラーリ御
嬢様）マルタを巡って彼等二人の運命が激変しようとは、千里眼のハヌッセン
でもこの時には見抜けなかった………

正真正銘の”鬼才”ヴェルナー・ヘルツォーク様が１０年ぶりにメガホンを
執った映画です。ところが………意外な程、堅実にしっとりと描かれていた
んでビックリした次第。

２０世紀のカリオストロ＝ハヌッセンに関しては、もう一人の気鋭イシュト
バン・サボーがそのものズバリ『ハヌッセン』と言う秀作を撮っており、
それとの比較も楽しみの一つだったんですが………今回の映画では、ハヌッ
センを「ペテン師」と捉えている処が少々残念であります。
確かに山ッ気はあった人ですし、いかさまも行ったのは事実です………が…
「予知能力」に関しては確かに在ったと言うのが通説でして、それが故に
「おやっ」と思ったのですが………が………実は、この映画の主人公は、
あくまでもジシェであったことが判明し、納得した次第。

冒頭から彼が出てくるんですが、一見デブです（爆）が………私の目は、
節穴ではありません。チェックしたのは腕廻り（上腕ニ頭筋＆三頭筋）
と首廻りなんですが………厚着で判別出来ず(涙)

が………程無く酒場での乱闘があり、ビヤ樽を持ち上げて飛ばした処から
期待値上昇♪
そして………サーカスで脱いだのですが、大胸筋はもとより、上腕ニ頭筋
三頭筋も物凄く………圧巻なのは、僧帽筋（首から肩に掛けての筋肉）
ココまで盛り上がった僧帽筋は、久々にお目に掛かりました。
現在、ジムに通って筋肉は目にする機会は人一倍多いですが、ここまでの
レベルの肩って（寒）そうそうお目に掛かれません。
最初は、オフシーズンのボディビルダーか、或いは元レスリング選手かな
ぁ等と考えていたんですが、ジシェがベルリンに移って９００ポンド
（約４００kg）でデッドリフトをしているシーンで、パワー・リフターを
している人だなぁと判明（ふう………（^^;;）

それもその筈………後で知ったのですが、ワールド・ストロングマン・コ
ンテストで優勝されていた現役の選手だったんですねぇ。（^^ゞ
そして………ヒロインのマルタ（アンナ・ゴラーリ御嬢様）も、現役のプロ
ピアニストだったと読んで二度仰天！！

その割には、演技も自然だし………ジシェの顔が可愛いんですよ！(^o^)

何の話でしたっけ………そうそう。二人の神に選ばれし男の話ですが………

実は画面には直接出て来ませんが、もう一人「神に選ばれし最強の男」
が極めて重要な役割を与えられています。

その男の名は………「国家社会主義党党首　アドルフ・ヒトラー」

そんな馬鹿な？！と呆れる方も多いと思います………が………政権を取って
第二次世界大戦に突入する迄は、ある意味「神に選ばれた」存在であった
ことは疑う余地が無いんです。

第一次世界大戦からベルリン陥落の総統官邸での自殺迄、知っているだけで
五回も命拾いしているんです。その内四回は暗殺未遂でしたが、この暗殺計画
が実に良く出来たプランばかりでして、「偶然」が無ければ志半ばにして
死んでいたのは疑う余地がありません。

この映画にも出て参りましたが「オカルト省」このプランも進行していまし
た。優秀な占星術師や魔術師が国家お抱えとなり………用が済んだら収容所
送りになってしまった結末がありましたが………その意味では、ハヌッセン
が最初の犠牲者と言えなくもありません。（殺害犯人は現在も謎の侭……
黒幕は情報相　ゲッペルスである説が最有力）

そして………ジシェも、ハヌッセンから「予知能力」を引き受けた事により
悲劇への歯車が廻って行くのですが………当時のポーランドの田舎町のみな
らず、大都会倫敦でも後の”大宰相”チャーチルですら「戦争屋」と叩かれ
た「嵐の前の静けさ」でありました。だから当時の人々の反応は当然の対応。

もう一つ付け加えますとユダヤ人迫害は、ナチスドイツの専売特許では無く
（計画経済性を組み込んだと言うことでは特許性があるかも（^^ゞ）その
前段階………シェイクスピアの時代から状況は変わらず。正直言って好かれ
る人材とは言い難いのが現実でありました。

そんな中で出てきた凸凹兄弟。頭脳明晰なベンジヤミン君（ヤコプ・ウェイ
ンくん）と強靭な肉体と優しき心を併せ持つジシェは、ユダヤ人にとって
希望の星となったのでありましょう。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉　里司
２００３年６月２５日　　銀座テアトルシネマにて鑑賞

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