（傷）『ＳＡＹＵＲＩ』

貧しい漁村に生まれた少女・千代（大後寿々花御嬢様）は、
９歳の時に姉の佐津と共に"花街"に売られてしまうが、妹
のさゆりは置屋に……姉の佐津は、女郎屋へと売られてし
まう。遣り手のお母さん（桃井かおり御嬢様）が仕切る
新田と言う置屋には、千代と同じ境遇のおカボという少女
と、花街一の売れっ子と評判の芸者、初桃（コン・リー御
嬢様）が住んでいた。初桃さん姐さんは何かにつけ千代を
苛めに掛かり、千代にとっては辛い日々が待っていた。
ある日、初桃さん姐さんから姉、佐津の居場所を聞いた千
代は矢も盾もたまらずに会いに行き、脱走計画を立てるが
脱走に失敗。一層の不遇に曝される……。がそんな時、
「会長さん」と呼ばれる男（渡辺謙さま）から「こんな良
い日和に泣いてはいけないよ。君のように美しい子が、ど
うしたのだい？」と優しく声を掛け、千代に涙をぬぐうハ
ンカチと小遣いを手渡すと、連れの芸者たちと共に立ち去
って行った……その瞬間から千代は、芸妓として身を立て
て行こうとする決意を固めるのでありましたが……。

一言で言いましょう……原作だけを読んで映画の方は観な
いで欲しいのです。

以下、映画版に関しての罵詈雑言モードが炸裂します。

まず美術がダメなのが致命的。全然京都らしくないと言う
か、これでは江戸末期の場末の娼館の風情。「置屋」は派手
ではありませんが、小さっぱりしていて質素な雰囲気が出
ていなくてはなりませんけれども、ワザワザ金を掛けて汚
くしているのが理解不能。そして、演出＆脚本家の無能さ
を示しているんですが、寒村から出てきた姉妹がまるで、
人攫いにあったかの様に描くのもどうか？と思ってしまう
んですねぇ（--;)
騙されて来ているのは事実なんですが、最初は街の華やか
さに心ときめき、それが失望へと変わっていく。この基本
的なラインが全然判っていらっしゃらない鈍感さ！！！

脚本も新人を含めて４人で担当しておられる様ですが……
よくもまあ……この素晴らしい原作をこうも台無しにして
くれたものだと嘆くばかり。
お茶屋に招かれて、料理屋からお膳に料理が並んでおります。
ところが……全部の品物には箸が付いた後があるんです。
これでは、名妓であります豆葉さん姐さん（ミッシェル・
ヨー御嬢様）や、その妹分となったさゆりさん姐さん（チャ
ン・ツィイー御嬢様）が如何に舞ひを披露して、お座敷を
盛り上げても、到底此方が手を出そうとは思いません！！

こんな愚かしい映画を観たあとで、原作を読み直そうと思っ
た方は居ないと思いますし、全部の皿に口が付いているんで
読んでみても、話の展開には驚かないと思うんですね（涙）

そして……監督ですかぁ……『シカゴ』のロブ・マーシャル
ですが、全然、京舞である「井上流」を理解していないんで
すわ。さゆりが舞ひを披露する場面ですが、あれは歌舞伎の
流れを汲む舞踏でありまして、源流を辿れば「能」に行き着
く「井上流」とは似ても似つかぬグロテスクな代物。

そして……ミス・キャストも甚だしい配役！！！
唯一良いと思えたのは、コン・リーさん姐さんが演じておら
れた初桃さん姐さんだけでして、原作よりも、千代に対して
の警戒心と端々に魅せる「哀しさ」が濃厚に妖艶に出ており
これだけは大絶賛致します。

あとは、岩村電気の延社長を演じていた役所広司さまと、
芸妓となったおカボを演じておられた工藤由貴御嬢様、そして
「お母さん」を演じておられた桃井かおりさまがまずまず。

ミスキャストなのは、豆葉さん姐さんを演じたミッシェル・
ヨーさん姐さん（これで芸妓？？）と思える程に酷い代物。
そして、渡辺謙さまもネーム・バリューだけで出ていまして
全然「会長さん」とのイメージが繋がらないんですわ。

映画化が決まったから素晴らしい原作が日本語訳（小川高義
先生の名訳＼(^o^)／）で読める様になったのは感謝しており
ますが……それで思い出した！大馬鹿字幕翻訳者　戸田奈津
子ババアなんですが、今回も致命的なミスをやらかして下さ
っています！（激怒）

芸妓は芸者で良いとしても、舞妓を「半玉」で訳すとはどん
な了見なんでしょうか？ちょっと調べれば判ることですし、
映画の中でも「舞妓」と呼んでいたのに改悪ですからねぇ。
まぁ……こんな大馬鹿女が字幕担当するんだと判っていたら
日本語吹き替え版を観ておくんだったと後悔しても後の祭り。

素晴らしい原作を寄ってたかって滅茶苦茶にしてしまい、
字幕翻訳者の大馬鹿女がトドメを刺した正月映画の大醜作
として名を遺すことでしょう。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉　里司
（２００５年１２月１５日　ワーナー・マイカルシネマズ市川妙典にて苦行悶絶噴火）

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