(律)『女の園』

京都郊外にある正倫女子大学は、校母大友女史の奉ずる良妻
賢母型女子育成を教育の理想とし、徹底した束縛主義で学生
たちに臨んでいた。七つの寮に起居する学生たちは、寮母で
ある五条真弓(高峰三枝子姐さん)の厳しい干渉を受けてい
た。姫路の瀬戸物屋の娘である新入生の出石芳江(高峰秀子御
嬢様)は、三年程銀行勤めをしたのちに入学したせいか、消
燈時間の禁を破ってまで勉強しなければほかの学生たちにつ
いて行くことが出来ず、その上、同郷の青年で東京の大学に
学ぶ恋人下田参吉(田村高廣さま)との自由な文通も許され
ぬ寮生活に苦痛を感じていた……。

木下恵介監督の1954年の作品ですが、今から50年前に
製作されたとは思えぬ程、先鋭的な作品です。映画は、女子
学生と学校側との紛争場面からはじまるのですが、後の60
年安保騒動を先取りしているかの様な感じすら受けるので
あります。それにしても、この映画京都を舞台にしているだ
けありまして、映画の大半を占める女子寮の会話は標準語で
ありますが、台詞の一つ一つが毒と棘を持った「イケズ」&
「いらんこと」の雨霰状態。

この映画の特徴的な事は、先ずタイトル&内容からして登場
人物が殆ど女性ばかりであると言う点と、登場人物一人一人
のキャラが立っている事が挙げられます。一見堅物の寮母で
も、過去には某公家様との不倫関係があり、その恋に破れた
事を奈良出身の富豪の女学生である林野明子(久我美子御嬢
様)が察知していると言う設定が中々深いものがあります。
そして林野明子が一番急進的な思想の持ち主なのであります
が、生活に根ざしていない言わば「プチブル」的な思想では
ないか?と他の女学生に疑われる始末。一方、補導監として
生徒指導にあたっている平戸喜平(こんな時代もあったのね
ぇ……の金子信雄さま)も、亡き妻の思い出を新入生の出石
芳江に寄せていると言うから、ホントにディープな世界が繰
り広げられているんですよねぇ。

唯一、普通(?)の映画らしいところは、ヒロインの芳江と
その恋人である参吉との純愛模様でありますが、どうでも
良いことの様ですが、参吉が東京に戻るのが蒸気機関車で、
何度か蒸気機関車が走っているシーンも登場するのですが、
その反面、電車もちゃんと走行しているんですね。昭和29
年の時点では、皇居周辺にも都電が走り、蒸気機関車と電車
が仲良く走っていた……そうした当時の交通事情の断面も見
る事が 出来て大変に興味深い作品でありました。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2007年6月26日 DVDにて鑑賞)

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