(哀)『麦の穂をゆらす風』

1920年のアイルランド南部の町・コーク。医者を志す青年デミ
アン(キリアン・マーフィさま)はロンドンでの勤務が決まり、
アイルランドを離れようとしていた。そんな時、仲間がイギリス
から送り込まれていた武装警察ブラック・アンド・タンズの暴行を
受け、命を落としてしまう。事件をきっかけに医師になる志を捨
てたデミアンは、やがてアイルランド独立を目指す戦いに、仲間と
共に身を投じていく。そんな彼らのゲリラ戦に苦しめられた英国
は停戦を申し入れ、戦いは終結するのだが、両国間に結ばれた講和
条約の内容の是非をめぐって、アイルランドは内戦に突入してゆく
のでありました……。

96年にベネチア国際映画祭でグランプリを取ったのが、同じく
アイルランド独立運動の立役者となったマイケル・コリンズの短い
生涯を描いた『マイケル・コリンズ』ですが、それから10年後
第59回カンヌ映画祭にて最高賞のパルム・ドールを受賞した本作。

アイルランドには「哀歌」が多いのですが、それは700年間続
いた英国からの抑圧の歴史が背景にあるからなんですね。本作品の
題名ともなったこの歌も抑圧への闘争と結ばれなかった恋物語を
歌っております。

で……映画の感想ですが、果てしなくハードですわ。これは……。
アイルランド独立戦争の悲劇は、独立を果す迄の英国とのゲリラ戦
とその後の不平等条約を巡っての批准派と反対派の内戦へと絡まって
いくところなんです。今回は、昔からの幼馴染を処刑しなくては為
らなかったり、果ては……兄弟の間ですら意見が割れてしまう。
それがラストで示されてバッサリと映画が切られてしまうのであり
ますが、この切り方たるや恐るべきものでして、観ている此方側も
暗然とした侭……どこにも持って行き様がない「哀感」を抱え込んで
映画館を後にすることになるんです。

かなり奥深い内容ですし、キャラクター造型の深さも中々のもの。
ですから再見に耐えうる内容なんですが、これを来週にもう一度
観たいか?と聞かれたら答えは否ですねぇ……。一年後ならば再見
したいかな?その点が戦争を扱いながらも不思議に後味が良くて
一週間後にまた観たくなる『父親たちの星条旗』との違いでしょう
か?(同時期に公開されていたので例として引用しました)

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2006年12月16日シネカノン有楽町にて鑑賞)

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