(5)『あなたのために』

17歳にして出産を間近に控えたノヴァリー(ナタリー・ポートマン御嬢様)は、家族を知ら
ずにに育った。彼女にとって家族らしき者といえば、ミュージシャン志望の身勝手なボーイフ
レンド、ウィリー・ジャック(ディラン・ブルーノさま)だけ。二人はオンボロのプリマスに
乗ってテネシーからカリフォルニアを目指して旅立った。けれど、オクラホマでノヴァリーが
御手洗い休憩のために立ち寄ったウォルマートから出てきたとき、ウィリー・ジャックはプリ
マスもろとも消えていた……。
頼る者が誰一人居ないノヴァリーは内緒でウォルマートの店内に住み着き、数週間後にフロア
で出産のときを迎える。一躍有名人になったノヴァリーと" ウォルマートベビー"。ノヴァリー
はそれから数年の間に、少々エキセントリックだけれど素晴らしい人々と出会い、彼らとの
関係の中に「家族」を見出していくのでしたが……。

一昔前だったら、映画を観たら直ぐに感想に取り掛かる筈でしたが、軽度の鬱状態が続いて
おりまして、10日以上の間が開いてしまいましたが、この映画では数字の「5」が非常に
重要な意味合いをヒロインに与えています。それも……不吉な事の象徴として(^^;
彼女に纏わる出来事の殆どが「5」に係わる……まあ、それは最初の内にバンバンと登場して
きますので判りやすいと言えば判りやすい。いかんいかん……やっぱり10日も過ぎると記憶
が曖昧になってきますねぇ。
この映画の主題は、「擬似家族」=「共同体」でして、「地縁社会」のアメリカならではの
物語が展開して行きます。ウォールマートでたまたま知りあって、一本の苗木を貰ったことから
「縁」が生じるシスター・ハズバンド(ストッカード・チャニングさま)。彼女は内縁の夫と
共同生活を続けており、アルコール依存症の会の会員でもあります。また……ウォールマート
で出産したノヴァリーを助けたのは、この街で図書館勤務の秀才の青年フォーニー(ジェームズ
・フレイン)彼には重病の姉が居て、その介護の為に自分の夢を諦めたと言う経緯があるんです。
言わばどこからしら「負の遺産」を抱えた人ばかりが登場し、身寄りの無いノヴァリーを助けて
行く展開なのですが、この映画の非凡な所は、ノヴァリーを置いてけぼりにして仕舞った元
ボーイフレンドのウィリー・ジャックの「その後」もキッチリと描いていることなんです!!

普通、この手の映画だと「元彼」の存在は、行って仕舞ってサヨウナラで画面から消え失せて
しまうものなんですが、「その後」の経緯とノヴァリーとの皮肉な再会を描く事で「大河浪漫」
としての格を与えているんですねぇ\(^o^)/

ウィリー・ジャックは、やり手の女性プロモーター。ルース・マイヤーズ(ジョーン・キューザ
ックさま)と契約し、最初は下積み……そしてヒット曲を一曲出して、次第に忘れ去られてし
まうという運命を辿る。一方のノヴァリーも、順風ばかりとは言えず、巨大な竜巻が来て、そ
れに因って恩人であるシスター・ハズバンドを失うのですが、その時に撮った「壱枚の写真」
に因って写真家への道が開けてくる……災い転じて福と為す。
また、ノヴァリーの友人かつ姉代わりとなる「5人」の子持ちのレクシー。実に男運が無い悲運
の女性ですが、彼女をアシュレー・ジャド御嬢様が演じて、それぞれが「生きている」んです。
脇の脇迄登場人物がしっかりと存在感を示し、ちゃんと「縁」を繋ぐ「物」やら「人」がある
んですねぇ。僅か「5年間」の物語ですが、130分の映画を観た後に残るのは、210分に
渡る年代記を観たかの様な感慨すら覚えた秀作です。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2005年7月25日 ビデオにて鑑賞)

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