(法)『シビル・アクション』

この映画の脚本・監督を担当したのが、『シンドラーのリスト』で脚本を担当
し、『ボビー・フィッシャーを探して』で初監督を果たしたスティーヴン・ザ
イリアン様。実に頭が切れる頭脳明晰な人だと思います。
事実を元にした原作があって、それを脚本にする腕は「天下一品」と誉めちゃう。
ですが……この方の映画は、「理」の映画でして、「情」の映画ではありません。
観るほうとしては「感動しよう」等と夢にも思わなければ、実に面白い映画を作
ってくれる人です。

若くして法律事務所を持ちポルシェを乗り回すジャン・シュリクトマンは、民事
専門の弁護士。マサチューセッツ郊外の町ウォバーンでは、15年間に8人もの子供
が白血病で死んでいた。原因は化学工場が流す廃液か? しかし立証は不可能に近
かった。ジャンは最初は断るつもりだったが……工場の背後に二大企業が絡んで
いることを知り……公害訴訟を提訴するが……。

裁判物では、意外に「刑事事件」よりも「民事訴訟」の方が、面白い出来になる
ことが多くて『訴訟』では、自動車会社を相手どった訴訟……双方の弁護士が父
と娘と言う設定でした。『パシフィック・ハイツ』は厳密には裁判映画ではあり
ませんが、「借家における居住権」の問題……そして、ザイリアン監督がこの
映画を撮るに当たって参考にしたであろう、シドニー・ルメット監督の名作!
『評決』では、カソリック経営の大病院の医療ミスを取り扱っており、白眉の出来。

この映画は、いろいろな意味で『評決』と比較すると面白いです。

甲ーどちらも「社会問題」を背景にした「民事訴訟」である。
乙ー二人とも事件が始まるまでは「傷害弁護士」(つまりは事件屋)である点。
丙ー相手方の弁護士が凄腕であり、一度は示談に為りかけるが、「正義」に目覚め
て依頼人の頼みを振り切ってでも真相追究。(笑)

甲における「社会問題」とは、片や医療ミスであり、もう一つは、環境汚染ですね。
「民事訴訟」の場合、基本的には「お金」が絡む訳でして、貧乏人を相手に訴訟を
起こしても、採算が取れなければ仕方無いし、大企業の場合「危機管理」の視点か
ら例え自分が勝訴しても裁判費用や、「イメージダウン」の影響が大きいと判断し
た時点で「示談」や「調停」が成立する余地があるんです。

丙の凄腕の弁護士ですが………今回は『評決』で「悪魔をも手玉に取る」と評さ
れたジェイムズ・メイソン様演じたコンキャノンを凌ぐキャラクターを演じてい
るのがロバート・デュバル様なのです。某大企業の顧問弁護士兼大学で教鞭を取
っている身なのですが……凄みがヒシヒシと伝わってくるんです。

ホント、この人を敵に廻したら終わりだなぁ………と感じるところがありまして、
ぼくなんかは観ながら「早く示談に応じなさいよ」と原告でもないのに、ヤキモ
キしてしまった位。(^^ゞ

事実を元にしているのですが………ラストは、「ああ、この手があったか!」と
ポンと膝を打ちました。原作の方も新潮文庫で出ているようですし、恐らく原作
の方が数段面白いだろう(映画も面白いですが………ディティールがね)と判断
致しました。明日から取り掛かることに致します。

「裁判映画友の会」広報担当 大倉 里司
(2000年2月6日 日比谷シャンテシネ1にて鑑賞)

「さ」行で、はじまる映画の感想に戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送