(品)『娼婦ベロニカ』

皆様、御機嫌如何でせうか?約一月ぶりに登場のマダム・DEEPで御座ひます。

江戸の吉原………仏蘭西革命〜普仏戦争迄の巴里には華やかなる「裏社交界」が
御座ひましたが、十六世紀の伊太利亜の不夜城ベネツィアにもかうした「裏社交
界」があつたことを知り、只管驚ひて仕舞ひましたの。

仏蘭西語読みでは、クルティザンヌ………英語読みですと、コーティザン。日本
での遊女の最高位は「太夫」で御座ひますが、最高級の娼婦は、王侯や大商人等
と互角に話しを出来る最高の教養も兼ね備へておりました。

この『娼婦ベロニカ』では、実在のコーティザンでいらつしゃるベロニカ・フラ
ンコ様(キャサリーン・マーコック御嬢様)の生涯を綴つた華麗なるルネッサン
ス絵巻で御座ひます。

ベロニカは、ベネツィア評議員でいらつしゃるマルコ(ルーファス・シーウェル様)
と恋仲で御座ひましたが、身分違ひと持参金の問題で結婚への道は閉ざされてしま
ふ………ところが、ベロニカ御嬢様の母上が並の女御では無かつたので御座ひます。
母上パオラ(ジャクリーン・ビセット様)は、かつて最高級のコーティザンとして
鳴らした女御。結婚出来なひのならば、寵姫として近づく道があることを諭すので
せう。

幸ひにして母の訓練が実を結び、最初のパトロンとして国防大臣のランベルティ
(サイモン・ダットン様)とねんごろになり………ベネツィア大司教、仏蘭西国
王アンリ三世(ジェーク・ウェーバー様)等とも寝床を共にするので御座ひまし
たが、御心は常にマルコ様の元へとあるので御座ひました。

海運立国ベネツィアにとりまして、当時の宿敵は、トルコで御座ひましたが、
そのトルコとの戦ひと………黒死病の流行により、サボナロウラを思わせるやう
な狂信的な修道僧が支持を集めはじめ、ベネツィアの繁栄にも翳りが射そうとし
てゐるとき………ベロニカ様は、魔女として裁判に架けられてしまふのでせうが。

ごく一般的な聖林製コスチユウムプレイでせうし、衣装のガブリエラ・ペスクッチ
様の華麗なる衣装を除ひては、特に目新しひ点は無ひのでせうが……何故か惹きつ
ける力があるのでせう。

豪華なのは、衣装と配役で御座ひまして、オリバー・プラット様、フレッド・ウォ
ード様、ジェローン・クラッペ様等が脇をしつかりと固めてゐる為、演出が平坦で
も惹きつけられてしまふのでせうか?

殊にクライマックスの魔女裁判の台詞廻しは、『ジュリアス・シーザー』をも思
わせる朗々たるもので御座ひまして、『クルーシブル』よりも、個人の自由の尊厳
を高らかに謳ひあげた名場面でせう。

正直申しまして、余り期待して居なかつただけに出来としては『恋に落ちたシェイ
クスピア』……『エリザベス』の方が格段に上でせうが、わたくしの格付けと致し
ましては此方の方を高く買ひます。

まことに持ちまして、不思議な魅力が或る映画でせう。(うつとり)

「裏社交界の徒花」 マダム・DEEP
(11月25日 日比谷シネシャンテ3にて鑑賞)

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