(貧)『アンジェラの灰』

愛蘭土系アメリカ人フランク・マコート様のピューリッツァー賞を獲得し、ベ
ストセラーとなった自伝の映画化ですが……生憎と原作は未読なんです。m(__)m

映画のみを観ていたのですが……これは、原作とセットで観れば面白さ倍増だっ
たなぁ……と大後悔。

時は1935年、米国を初めとする大恐慌の真っ最中。ニューヨークのブルック
リンで一家族が暮らしておりましたが、生活難の為にアイルランドに逆戻り♪
(珍しい展開(^^;;)かつてアイルランド独立の闘士だったというアル中の父
(ロバート・カーライル様)は、北アイルランド出身の為、どちらにも属せない
身。気位は高いが、生活力が無いのが一家の悩みのタネ。一家は仕方なく母(
エミリー・ワトソン様)の故郷であるリムリックの親戚の家に転がり込むが……。
そうした最中、フランク君は、何時の日にかアメリカに行くことを決意して蓄財
に励むのでした……。

清く貧しく美しく……では無いですが、生活難に喘いでいる自分の様な人間は
これを観ると元気が出ます!かなり重たい……ビンボ臭い話の展開ですが……
描写が明るいので観ていて胃にもたれません。

ビンボ臭い展開の割には、ホント……お金が掛かっているのが判るんですわ。
パラマウントとユニバーサル二社のメジャー会社が二つ並んだのは久々では無い
でしょうか?

雨がジトジト降り続き……気候も寒い。石炭の配給も断られ……落ち穂拾いで
は無く、落ちた石炭を拾う(この描写は『マイ・レフト・フット』にも出てき
ました。フランク君は、家計の足しに為ればと………石炭積みのアルバイトに
精を出したのは良いけれども、結膜炎になってしまったり、腸チフスに罹って
しまったり……医療費だけでかなりの出費となるんですねぇ……(が、ここの
出費のシーンは描かれていなかったです)

随分と子供の描写ばかりを書いてきたのですが……この映画の主題は、米国=
愛蘭土移民一世&二世の生活史なんではないかなぁ?と思ったのですよ。
呑んだくれの父……自分の親父も呑んだくれで……おまけに競馬狂いでした。
ホントに家に入れる金が無かった……というのは、フランク君も自分も同じ。
そしてお互いに長男でしょ?幾つか国籍と年代を越えて通じ合うものを感じる
のですが……それにしては、ズシリと胸に来るものが無いんですね。
何だろうか……非常に丁寧に作ってある映画なんですよ。父親が棺桶の上で黒
ビールのグラスを置いてあるシーンを見つけてしまうのが痛かった……。誰も
責めていないのが優しさなんですが……何かが足りないんです。

自分は、東欧よりもケルト圏の文化&歴史に興味があるし、もっともっとのめ
り込める筈なんですよ……東欧系移民の年代史となった『わが心のボルティモア』
よりも。原作を読めばもっと浮かびあがってくるとは思うんですが……一家族の
歴史に見せ掛けながらも、もっと普遍的な「愛蘭土系移民年代史」として描いて
いる気がするんです。『わが心のボルティモア』は、あくまでも「一家族の歴史」
として描いているし、「柱のキズは〜♪」的な日本でも良くあるじゃないですか。
そうした「家族」に対してのディティールが薄い気がします。

広く広く見せようとして……逆に範疇が狭まってしまった惜しい作品に思われて
為りません。これが率直な感想です。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年12月1日 日比谷シャンテシネ2にて鑑賞)

BGM:OST:『Long Joureney Home』より『Famine Theme』(名曲!)

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