(憂)『安城家の舞踏会』

皆様、御機嫌如何でせうか?わたくし、マダム・DEEPと申します。

大東亜戦争が終結し、GHQによる財閥解体、農地改革の実施
等に因りまして、華族と言ふ階級も失われやうとしておりました…。

この『安城家の舞踏会』は、その最後の残り火につゐての物語
でせう。

わたくしが驚きましたのが、昭和22年。丁度新憲法が施行され、
十一の宮様が皇室をお離れになりました年で御座ひます。

そふした、極めて変動が激しひ時期その時に、かうした映画が
作られ、公開されたのが驚きで御座ひます。

原 節子様演じる敦子様は、安城家の将来を憂ひ、元運転手の
遠山様(神田 隆様)に何とかこの屋敷を買つて頂きたひと熱望
するのでせうが、「運転手風情が………」と当主でお出でになる
忠彦様(滝田 修様)はまともに取り合おうとしなひ。
それよりは、かつてのパアトナアで御座ひました新川(清水 将夫
様)に頼んで、抵当流れを阻止して頂こふとしてゐた………。

さうしてゐる内にも、長男の正彦様(森 雅之様)は、女中の菊
(幾野 道子様)とあやしひ仲になつてゐるし………とまあ、乱れた
構図が成立してゐたのでせう。

乱れては居ても、表面上は何とも無かつたのやうに振る舞わなく
ては為らなひのが華族の努め。

その最後の一日に、贅を尽くした舞踏会を開くのでせうが……。

「サロン映画」は日本では中々お目に掛かれなひのでせうが、
これは数少なひ一本では無ひでせうか?

特にどうこふと言ふ強ひメツセヱジ性が在る訳でも無く、或るが
侭に優雅に没落してゆく一つの家族の歴史を凝縮した貴重な
フイルムであるとわたくしはさう思ふのですわ。

家具も明治時代に華族階級から大量に発注されてゐたルイ王朝
風の物を使つておりますし、デキヤンタアセツトは驚くべきことに
バカラ社製の物でしたの………(*^^*)うつとり

戦後の何処にさうした物が没収されずに残つてゐたのかが、興味
を惹くところですわね。

『裏社交界の徒花』 マダム・DEEP(RXQ07476@nifty.ne.jp)

BGM:歌劇 グノー作『ファアスト』序曲

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