(業)『あらしのよるに』

ある嵐の夜、仲間とはぐれたヤギのメイは、壊れた山小屋
で雨風をしのいでいた。そこへ、同じように逃げてきた仲
間と思しき一匹の動物がずぶ濡れで飛び込んでくる。真っ
暗な小屋の中、互いに一人ぼっちで心細かった二匹は、話
をするうちに仲良くなり、次の日に「あらしのよるに」
を合い言葉に、再会を約束する。
しかし、翌日、メイの前に現れたのは、オオカミのガブ
だった!本来なら決して仲良くなれない二匹だが、天真爛
漫なメイは無邪気にガブを慕い、ちょっと気弱で優しい
ガブもそれを受け入れる。だが、平穏な日々は永遠には続
かなかった。その友情がそれぞれの種族に知られるところ
となったのだ。果たして、二匹の運命は?

きむらゆういち様作のベストセラー絵本を 杉井ギサブロー
監督が映画化した本作。原作は未読ですが……幅広い読者
層に支持されていると言うのも十分に頷けます。

と……言うか……これ、子供だけに観させておくのはおか
しいですよ。その位の「映画」です。

まず冒頭から只ならぬ雰囲気を作り上げ、主役であるメイ
の幼少時代にて母と死別と言う悲劇を持ってくるのですが、
このシーンを入れた事によって「山羊」と「狼」は決して
相容れない運命にある事を強く印象付けることに成功して
おります。

牧歌的なオープニングから始まったら、単なる「御伽噺」
の域を出ないところなんですが、まず冒頭から「現実」を
見せることにより、メインの話である狼であるガブと山羊
のメイの「種族を超えた友情」と言う話が、普遍的且つ
リアリティを持って迫ってくるんですね。

その後の話の展開の仕方も、決して無理無く、尚且つお子
様にも判るように味付けしている……。一方、保護者側と
してはどちらの立場でも判断出来る訳なんです。

「当事者」と「それ以外のもの」と言う二つの区分をです。

二頭だけだったら、未だ問題には為っていなかったのです
が、「他者」が加わることにより「種族の保持」と言う
それぞれの「共同体の論理」が働いてしまう。このあたり
の持って行きかたも実に上手い!そして二頭が選んだ結論
とは……?!になるんですが、それぞれの「過去」があり
それが故に「そうするしか道は無かった」と言う選択に
行き着くんですね(涙)

山羊の声を演じたのが成宮寛貴さま。正直言って余り好き
な役者では無かったのですが、この一作でグ〜ンと評価
アップ。狼のガブを演じたのは中村獅童さまでして、相変
わらず芸達者!

実はこの映画。お子様向けにしては107分と長尺ですが
それだけの内容がギッシリと詰まっていて「無駄」と言う
ものが一切ありません!

未見の方の為、語れないのは残念なんですが、『あらしの
よるに』と言うタイトルに二重の意味を含ませているのに
は感嘆致しました。

メジャー系正月配給映画の中で自分が観た限り、一番の推薦
作です。公開もそろそろ終わりそうだし……何とか応援した
いですねぇ。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2006年1月1日 お台場 シネマメディアージュにて鑑賞)

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