(黒)『バジル』

「バジルと言えば親も同然」……と言う親父ギャグ以前の物を飛ばして
しまったが、妙に語呂が良いので気に入ってしまった。(滅)

さて、ミステリーの大古典『月長石』や、ゴシック浪漫の傑作『白衣の女』
で知られる,ウィルキー・コリンズ原作の『バジル』を鑑賞致しました。

非常に端正に撮れた映画ですが、惜しいことにあと一歩なんです。(涙)
それさえクリアー出来てしまえば、文句無しの傑作になったでしょうが…。

時は、ヴィクトリア女王統治下の英国。とある名家に生まれた美青年
バジルは、不慮の事故に巻き込まれ、その時に知り合った同世代の
青年、ジョン・マニヨンと知り合う。マニヨンに自分が求めていた「自由」
を見出したバジルであったが、実は思わぬ陥穽が待ち受けていた……

これが大体の粗筋です。

バジルを演じたのは、世界の美青年50人に選ばれた、ジャレッド・
レド様、中々高貴な美形です。
マニヨンを演じたのが、製作も務めたクリスチャン・スレーター。
マニヨンの雇い主の娘であり、「ある目的」の為にバジルと結婚する
ジュリアを演じたのが、『ジョー・ブラックをよろしく』よりも、此方の方
の演技が遥かに素晴らしい、クレア・フォーラニー様

話の展開としては中々よく出来た物語だと思うし、ミステリーと言う
よりも青年バジルの「成長物語」として抑揚が取れた演出なんですが、
端正すぎて、あと一歩のところで踏み込めないもどかしさが付きまとう
のです。

それぞれの人物が持つ、「欲望」と「葛藤」は解るのですが、それが
上手く絡み合っていないのです。本当に惜しい。

でも、この映画の素晴らしいところは、別の所にありまして、「配色」
の美しさなのです。

冒頭に馬車で、家族が移動をするシーンがあるんですが、その「黒」
の使い方は、レンブラントの絵画を彷彿させる「黒」。(*^_^*)(ポッ)
「闇」にも「色」を感じさせる「黒」なのです。

主人公バジルには、「抑圧」をイメージさせる「黒」系統の衣装を着
させ、マニヨンには、努力と勤勉を象徴させる様な「茶」、そしてヒロイン
のジュリアには「紺碧」、バジルの従姉妹クララには、「無垢」をイメージ
させる「純白」と「金」、此処まで「配色」に拘った映画は、ピーター・
グリナウェイの『コックと泥棒、その妻と愛人』以来なのです。

調度品の絢爛豪華さでは、『Queen Victoria〜至上の恋』には遠く
及びませんが、色使いの上手さ、光の使い方の巧みさでは凌駕して
おります。

美術関係の御仕事をされている方には、是非とも観て頂きたい1本
として強く推奨させて頂きます。

「大河浪漫を愛する会」 大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)


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