(神)『バタフライ・キス』

皆様、今日は。『バタフライ・キス』を昨日鑑賞致しましたので、その感想を
書かせて頂きます。


某方が、『バタフライ・キス』に関して非常に鋭いことを述べられていた
のでその御発言を引用させて頂きます。m(_)m

>>この映画って、『アルテミシア』の『ホロフェルネスの首を切るユーデット』
>>を引用したシーンがあるんだよね。

映画の中に出てくるのは、女性二人ですし、一般男性諸氏の「性」に関して
非常にネガティヴな感情を抱いております。

ガソリンスタンドで知り合った運転手の首を切った死体を見せる所などは、
正に『ホロフェルネスの首を切るユーデット』その侭でして、他の画家とは
違って、アルテミジア・ジェンティスキ描くこのシリーズでは、「女性同士」の
連帯を描いて留まることを知りません。

もう一つの暗示は、クロスワードパズルを車内で行っている時に、突如と
して「ホロフェルネス」と言う言葉が出てくるところなのです。

さて、この映画の中で二人の女、ユーニスとミリアムと言う存在なのですが、
僕の見方では、この二人は人間では無く、それぞれに片翼を失ってしまった
「天使」と言うイメージを受けました。

人間とは、「善」と「悪」二つがあって、初めて「人間」と言える存在でして、
「天使」は「善」のみの存在、「悪魔=堕天使」は「悪」のみの存在なのです。
僕は「善悪」二つを持っている存在は、「神」と「人間」しか存在しないと考え
ております。

ユーニスと言う名前を聞いて即座に連想したのが、ルース・レンデルの
『ローフィールド館の惨劇』のヒロインである、ユーニス・パーチマンなのです
が、彼女も『バタフライ・キス』の中のユーニスと同じく「無垢なる悪人」つまり
存在自体が「悪」と見做されてしまう存在であります。

彼女は言います。「私は、神に見捨てられたのよ………」

実に象徴的なセリフです。だからどんなに殺人を行っても「罰せられる事が
無い」のです。

その救済として、「神」がユーニスに遣わしたのが、同じく「片翼の無い天使」
の存在であるミリアムです。

映画の中で、彼女は難聴の女性として描かれておりますが、これもまた象徴
的でして、本来持っている聴覚には欠けている存在です。

ミリアムが語るセリフの中に次の様な言葉があります。

「わたくしは難聴ですが、彼女の言葉だけは補聴器が無くても聴き取れた」

同じく「完全な人」では無い者同士が共有するコードによって結びついて居り
ましたし、何よりもミリアムには最大の欠陥があったのです………。
それは、彼女自身が自分の存在を「悪」だと自覚して居なかった事です。

常に「悪」を自覚し続けているユーニスと、自分の存在が「善」だと思い込ん
でいるミリアム。

モーテルで初めてセールスマンを殺すときは未だ、彼女は自分を「善」だと
思っていた。これでは未だ不完全なのです。ただ、ユーニスがこの時に
「彼女なら………」と思ったのは、間違いは無いでしょう。

そして、「死海」を思わせる海で、ミリアムは遂に愛する存在であるユーニス
を手に掛けます。この時にクランベリーズの『No Need Argue』が流れるので
すが、非常に映像とマッチしていて素晴らしいと感じました。

そして、ユーニスは自分の存在をこの世から葬ることに成功して、ミリアム
は「完全な人」になることが出来たのです。

その時点で、「天使」から「人」へと「昇華」した二人。神は「人」と認めたから
こそミリアムに罰を下しました………。

僕はこの映画のラストシーンの事を、ハッピーエンドだと信じて疑いません。

「大河ロマンを愛する会」 大倉 里司(HCD05016@nifty-serve.or.jp)

BGM:The Cranberries『No Need Argue』

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