(魂)『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』1

(此れは、余りの長文の為に二回に分けますm(_ _)m)

本日、『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』を四年ぶりに見直しました。

会議室でも、この映画の事を取り上げたことがありますが、
その際も記憶に頼って書いていたもので、いつの日にかキチンとした感想
を書き上げなくてはと感じていたのです。

本日、僕自身の魂に決着をつけるときが来たようです。この文章は、他の
誰の為でもなく、自分の想いを一度整理したいが為に書いております。

短く書こうとしましたが、この映画の事は短く書くと不完全なものになって
しまうのです。長文ですが何卒御容赦ください。


この映画を再見して思ったことは、徹底して妥協の無い物語の進め方を
していると感じました。
それは、話の進め方のみならず、キャラクター造形にそれが生かされて
います。

1972−1973

チカーノ(メキシコ系アメリカ人は誇りをもって、自分達の事をこう呼ぶ)の
母親と白人の父親の間で生まれたミクロ(ダミアン・チャパ)は、自分自身
をチカーノだと思いたいのですが、白人にしか見えない容貌のため、常に
自分の存在証明を明らかにしようとしています。

地元ギャング団のヴァトスに入ったのも、自分のアイディンティテイを確認
したいが為の行動です。

従兄弟のパコ(ベンジャミン・ブラッド)は、元ボクサーと言う設定ですが、
彼のアイディンティテイは、未だこの時点では確立していませんでした。

クルス(ジェシー・ボレゴ)は、丁度その意味でミクロとパコの中間にいる
存在であると言えるでしょう。
生っ粋のチカーノである彼は、ミクロのように肌の事で違和感も感じる
ことなく、天から授かった絵の才能を与えられていたことからも伺えるよ
うに3人の中では一番恵まれていた存在と言えるかもしれません。

少なくとも、あの事件が起きるまでは………。

ミクロは、自分自身がヴァトス団に入る為に、対立するブントス団に抗争
を挑みます。襲撃は成功し、ミクロは初めて、ヴァトス団への入会を認め
られます。入会儀式として手の甲に刺青を彫るのですが、これが後々大
きな影響を及ぼすことになるとは、誰も考えていなかったでしょう。

ここで、象徴的な意味を持っているのが、刺青をした部屋で壁にさりげなく
飾られていたクルスの絵です。絵には3人の姿がさりげなく描かれており
ました。この絵の持つ意味こそが最後のシーンで鮮やかに活きてきますが、
それはあとで述べます。

クルスが幸福の頂点に居たとき、そこから叩き落とされるような悲劇が
起こります。ミクロが起こした抗争の報復に彼らブントス団が標的として
選んだのは、クルスでした。襲撃を受け、背骨を骨折すると言う重傷を負
うことになります。

ミクロとパコを始めとしてヴァトス団が、怒ったのは言うまでもありません。
報復は報復を呼び、終わりがない。病院で密議をするヴァトス団に向かっ
てクルスの母親が叫びます。
「貴方達、誰と闘っているのか分かるの?自分自身と闘っているのよ」と。

血気盛んな若者ですから、そんなことに耳を貸す筈もなく、報復をする為に、
クルスが重傷を負わされた丘に赴きます。
悲劇はそこで起こったのです。ヴァトス団のボスをミクロが誤って殺してし
まうのです。

放たれた3本の矢が、それ以降再び交差することはありませんでした……。

1973−1980

この時期は、ミクロがサンクエンティン刑務所に入っているところの描写
が続きます。
ミクロは、ここでも最初は除け者でした。辛うじて彼を支えていたのは、
手の甲に彫ったヴァトス団の刺青でした。

その刺青を見た、ラ・オンダのメンバーの一人、ボバイの手引きにより、
刑務所内でのリーダー格の一人、モンタナ(エンリケ・カスティロ)でした。
彼は、ミクロに言い渡します。もし仲間に入りたかったら、敵の幹部を
殺せ。それが「血の結束」(ブラッド・イン・ブラッド・アウト)だと。

彼は約束を忠実に果たし、始めて自分が必要とされている存在である
と言うことを確認することができました。
ミクロは、殺害した白人幹部のメモを基に、刑務所内での自分の力を
確立していきます。

それと平行して、パコとクルスの物語も進んでいきます。

背骨の骨折は直ったクルスですが、彼はその代わりに大きな代償を
払うことになります。痛みを取る為のモルヒネから、ヘロイン中毒に犯
されていくのです。

パコは、刑務所入りを免れる条件として、海兵隊に入隊します。
しかし、まだこの時点でも彼自身のアイディンティテイは、それ程確立は
していなかったでしょう。

彼のアイディンティテイが確立するのは、皮肉にもクルスの麻薬中毒が
引き起こした事故からでした。ヘロインを打った注射針をそのままにして
おいたが為に、彼の弟ファニートが薬物中毒を遂げてしまいます。
(1975)

この映画で重要な役割を果たしている松の木からの俯瞰で、墓地を
カメラは捉えております。
ここで棺桶を担いでいるのが、今や士官服のパコです。「時の流れ」を
一瞬に切り取った鮮やかなシーンでしょう。

クルスが出来た事と言えば、遠くからファニータの葬儀を見つめること
だけ、それも父に断絶宣言をされ、無言で墓地を去るクルス。

(続く)

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