(政)『ブルーワース』

オールド・リベラリストの最後のあがき……これが『ブルーワース』と言う映
画を観て感じたことなのです。

フランク・シナトラ亡き後の……現在の聖林の首領の一人が、ウォーレン・ビ
ーティであることは、映画通ならば、薄々察しが付くと思うのです。

製作・監督・脚本・主演迄を一人でこなし……撮影監督がビットリオ・ストラ
ーロ……(ひええ)、音楽……エンリオ・モリコーネを初めとして、70年代
から80年代に掛けて大活躍し、現在は「大御所」クラスのスタッフばかりを
使ったのは、御見事!流石は、「表の帝王」健在と言うことでしょうか。です
が……これが別のところで仇になってしまうんですよね。

まあ、御話しの方は、米国大統領選にて、共和党の候補者は、古株のつわもの
ロバート・ドール(泣く子も黙る院内総務)対して、民主党は、ビル・クリン
トンを立てた……(しかし、実名を出してしまうところが凄いよなぁ……)
さて、此処までが現実の話。

ここから、壮大なホラ話の、はじまり……はじまり……\(^0^)/

さて、民主党では、対抗候補として……現職上院議員のジェイ・ブルーワース
(ウォーレン・ビーティ)が出馬していたが……どうも、旗色が悪い……泣き
っ面に蜂は来るもので、顧問のダイバース(ジャック・ウォーデン)のアドバ
イスを受けて、香港にある豚肉の先物取り引き(此処がリアルですねぇ)にて
大損を出してしまう……。

さて……困った。後は死ぬしか無い……こう思ったブルーワースは、保険業界
の大物クロケット(ポール・ソルビノ)を呼んで自分に1,000万ドルの保
険を掛け、雇った殺し屋に自分を殺させると言う暴挙に出た……。

さあ、後は死ぬだけ……怖い物が無いブルーワースは、言いたい事を談志師匠
の様に吐きまくる……。此処が凄いのですが……映画業界の大物ばかりの会合
で、ユダヤ人ネタを出すところは、逆差別の極み。好きですねぇ……(*^_^*)(ポッ)

ところが……何と、こうした言動が意外や意外……徐々に支持率が上がって行
き……豚肉の相場も変動してしまった為に……大儲け。
こうなると……死が怖くなるのは人情……。あちらこちらを逃げ回り、そうこ
うしている内に「伝説」になってしまう……。

ただ、こうしたネタが……余りにも「通好み」でして……少なくとも、ガブラ
スやルメットの黄金期の作品を観て受ける人間で無いとちょっと辛い……例え
ば、『ネットワーク』で大喜びした人間だったら見るべきです。

だって、ブルーワースの選挙事務所にあるポートレートが総て、民主党の大物
ばかりだと言う事に気付く人間は、そう居ないと思いますよ。

そして、ヒップ・ホップに合せて、政治批判を行なうのですが(この歌詞は大
爆笑もの)でも……敢えて言うのでしたら、ティム・ロビンスが既に『ボブ・
ロバーツ』でやってしまっている事なんです。

そうした、悪くは無いけれども……今は相手にされない何か過ぎ去ってしまっ
た物への想いが強いのですが……どうも、歯切れが悪い。一重にスタッフを
「巨匠」だけで集めてしまった為の弊害だと思います。(涙)

それが、作り手であるビューティが解っているから、何か辛いんですよね。
物分かりの良い、ダンディなロマンス・グレーの紳士と一夜を過ごし、翌朝、
ベッドに付いた残り香を嗅ぎ、枕の下に福沢先生が数枚入っていたと言う感じ
に一番近いのかなぁ……。

良くも悪くも、最後の「オレ様映画」の決定版でしょう。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司(HCD05016@nifty.ne.jp)
(7月7日 日比谷シャンテ・シネ3にて鑑賞)

BGM:クランベリーズ『ハリウッド』

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