(父)『キャラクター〜孤独な人の肖像』

父と子の確執については、『エデンの東』から『シャイン』に至るまで古今
東西色々な映画が作られてきたが、これほどテンションが高い映画も
珍しいのでは無いだろうか?

建物に喩えて言うのならば、日本銀行旧本店を思わせる剛構造的な
イメージがする作品。映画が始まった瞬間に座り直してしまった。(^^;;

舞台は1920年代のアムステルダム。泣く子も黙る執行官兼銀行家
ドレヴァーハーヴェンが死体となって発見され、容疑者として弁護士の
カタドルフが逮捕されてしまう。取り調べが進んでいくうちに実は彼が
ドレヴァーハーヴェンの私生児だったことが判明するという展開である
が、誰だろうと殺したくなるような人間なんだなこれが。(笑)

カタドルフの回想によって描き出されるのは、父親に対して興味を持ち
その期待がもろくも打ち砕かれ、憎悪に至る過程のうちに自分の性格
までが段々と自分が憎んでいる父親に似てくるという皮肉。

息子であるカタドルフにとっては憎き父ドレヴァーハーヴェンを打ち負
かす為ならばどんな代償も痛くはない。たとえ最愛の女から求愛の
打診があったとしても、それに気付かないほど鈍感になってしまった
感性。それが痛々しい。

普通の映画ならば、「悔い改めよ」で改心シーンなり、泣きのシーンを
挿入するところであろうが、この映画のテンションの高さはそれをも
許さない。カタドルフがドレヴァーハーヴェンを負かすまでそれは続く。

映画の最後で意外な展開が示されるのであるが、僕は父と子の和解
だなんて夢にも思っていない。

父親が息子に遺した32万ギルダーと言う巨額の遺産は呪いなのだ。
それを継承した瞬間に自分と同一化される為の甘い罠。

息子は父が死んでもその呪縛からは逃れられないことを示してこの
映画は終わる。

自分と言う存在を生んだ父親を憎み、そして軽蔑している僕と同様の人
たちに観て欲しい映画である。

大倉 里司(HCD05016@nifty-serve.or.jp)

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