(悔)『友へ〜チング』

1976年夏釜山。地元の元締めを父に持つジュンソクは、口ベタながらケ
ンカが強くて情にも厚く、みんなから一目置かれていた。葬儀屋の息子の
ドンスもケンカっ早いが憎めない存在だ。それに優等生のサンテクとお調子
者のジュンホの四人の小学生は、いつでも一緒に遊んでいた幼なじみだ。
四人は別々の中学に進むが、再び高校で顔を合わせ一緒につるむようになる。
しかしある事件をきっかけにジュンソクとドンスは退学処分になり、やがて
二人は裏社会に足を踏み入れ対立してゆくようになる………。
だが………裏社会には、裏社会なりの「非情の掟」があり数年後、とある悲劇
を招き寄せることになるとは誰も予想していなかった………。

1976年から1993年迄の激動の韓国現代史を背景にして、四人の旧友
の運命の変遷を描く………と最初に気になったのが、”上映時間”なんです。
今回は118分………1時間58分では短すぎる………と懸念を抱きました。
そして、それが的中してしまった事に深い悲しみを抱いております。

この話、最低でも2時間30分は掛けなくてはイケナイ話なんです。出来れば
『ロード・オブ・リング』のように3時間あれば傑作になったかも知れない
ですねぇ………それが悔しい。『ロード・オブ・リング』は2時間でも充分
だと思っていますが………(--;)

まず………何故短すぎたのか?といえば、ジュンソク(ユ・オソンさま)と
ドンス(チャン・ドンゴンさま)が裏社会に入ってのし上って行く過程を描
いておりますが、話としては面白いのですがディティールが少なすぎるんです。
入札の直前にボールを冷やして直ぐに判るようにすると言うアィディアは秀逸
ですし『トレイン・スポッティング』からの切り取りもあって中々。ですが……
その前の「恐喝」ですか………それとどう絡むのかが全然見えてこない。

そして……致命的なのは、この話、四人の登場人物を絡ませる必然性がまるで
感じられない事。裏社会に入ったジュンソクとドンス……そして、エリート
コースまっしぐらのサンテク(ソ・テファさま)だけでも成立する話なんです。
ここにジュンホ(チョン・ウンテクさま)と言う、第四のキャラクターを入れる
ことにより、話が締まるどころか彼のキャラクターの薄さによってひび割れが
生じているんですよ。

高校時代の四人が道路を滑走するシーン。まあ………動きはありますね。
でも………そうした描写を入れる前に、四人の性格設定を描き切ることを何故
していなかったのか?それが非常に悔しい!

更に仮に三人だけとしてみても、堅気の仕事をしている筈のサンテクのディティ
ールがまるで描かれていないのが致命傷。
どうやら大学院に進んで、渡米して博士過程に進んでいるようなんですが……
「台詞」だけでは説明不足も良いところ。彼の生活や「人生」の描写が希薄なん
で裏社会に入った二人の対比も相対的に下がってしまうんですよ。この二人が
熱演しているだけに惜しいし、悔しいんです(涙)

監督と脚本を務めたクァク・キョンテクさまは、かなりの勉強家だと思うのですし、
充分に「思い」は判るんですが、重箱の隅をホッタラカシにしていたんで、蟻の
穴から堤崩れる………残念ながら「失敗作」と言わざるを得ません。
久方の「大河浪漫」と言うジャンルなだけに悔しいです。(号泣)

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司

2002年4月7日 日比谷みゆき座にて鑑賞

BGM:OST:『ブラッド・イン・ブラッド・アウト』

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