（宴）『コヨーテ・アグリー』

みなさま、御機嫌如何でせうか？わたくし、マダム・ＤＥＥＰで御座ひます。

今回は、紐育裏社交界の一端を御案内したひと思つておりますのよ。

此方は紐育で人気の酒場“コヨウテ・アグリイ”。毎夜のやうに、女給による
力強ひ舞ひや余興が繰り広げられて居りました。本来は別々の目的があるので
せふが、ひとまずの金子を得る為に此方にて活躍してゐる方々でせう。
歌姫を目指し、ニュージャージーからやつて来たヴァイオレット（パイパー
・ペラーボ御嬢様）もその一人で御座ひましたの。ですが、紐育での売り込
み活動は上手くいかずその上、舞台恐怖症の彼女は自分の歌を人前にて披露
することもできなひ。そんなある日、ヴァイオレットはケヴィン（アダム・
ガルシアさま）と出会ふ。ケヴィンは彼女の才能を評価し、支えとなってく
れるのでせうが………

この映画は、ヴァイオレットさまの成長物語の方式を取つておりますが、真
のヒロインはコヨウテ・アグリイとやう「酒場」なんでせう（きつぱり）
女給たちに因る「舞ひ」も、バア・カウンタアの上とやうこともあり大きな
制約が御座ひます。さうした視点で御覧になつても面白く無ひですわね。
ところが、この酒場を支配するマリア・ベロさま演じた女主人さまに視点を
当てると途端に光るので御座ひます。

警察や消防署、保健所、酒屋等の折衝。新宿裏社交界でもさうでしたが、警察
等はあれやこれや理屈をつけて意に添わなひ店を潰しに掛かりますのよ。
「２０ルクス無ひですねぇ」とか………「非常口に荷物がある」とか、因縁を
つけやふと思へば幾らでも付けられるのがこの世界。
この映画の醍醐味は、「生きてゐる酒場」の姿をありのままに写したことに
御座ひまして、それ以上でも、それ以下でも御座ひません。（きつぱり）
バア・カウンタアでの金銭のやり取り、客を怒らせない喧嘩の収め方。店に
おける用心棒の役割等など………面白ひ要素がぎつしりと詰まつてゐる映画。

帝都でも紐育でも、夜毎に「宴」は開催され、表には決して記されなひ歴史を
日々綴つてゆくのでせう。

もつと整理すれば、映画としては優れたものに為るのでせうが、わたくしは
「ありのままの酒場」が好きでせうので、これで満足ですのよ（につこり）

｢裏社交界の徒花｣マダム・ＤＥＥＰ

（２００２年１月１７日　ビデオにて鑑賞）

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