(生)『戦争のはらわた』〜『Cross Of Iron』

来年1月下旬より、リバイバル公開される戦争映画の金字塔的名作。

実は、20年前近くに一回観ただけでして、ビデオ化になっても手を付けて居
なかったのですが……逆に今迄引き伸ばしておいて正解だったと思います。

試写室での小さなスクリーンとは言え、ニュープリントでしっかりと鑑賞でき
る環境でこの作品を観れたことは、大いなる至福です。

「ちょうちょ」の和やかな唄と裏腹に映し出されるのは、第三帝国下の独逸の
現状と東部戦線での過酷な現実。過去の実写フィルムと、新たに撮った画像を
巧みにコラージュさせながら映画は始まりました。

舞台は、1943年第二次世界大戦下の東部戦線のとある区域。
一時はスターリングラード迄侵攻した独逸軍でしたが、赤軍に押されて敗退寸
前。それを何とか食い止めようとするブラント大佐(ジェームズ・メースン様)
率いる歩兵連隊には、副官のキーゼル大尉(ディビッド・ワーナー様)と共に
誇るべき一つの小隊があった……。
それは、戦場の現実を誰よりも熟知しているシュタイナー伍長(ジェームズ・
コバーン様)が率いる小隊であったが、頼りになる反面、反逆心旺盛な為、軍
首脳部からは煙たがれている存在でもあった。やがて、志願してやってきたプ
ロイセン貴族の末裔シュトランスキー大尉(マクシミリアン・シェル様)が配
属された……。
彼の目的は、ただ一つ、故郷に錦を飾って戻るため「鉄十字勲章=Cross Of
Iron」が欲しかった為に、敢えて前線を志願したのだが……シュタイナーをは
じめとして現場は、そんな彼の魂胆を百も承知、そのことにシュトランスキー
が気づいた時点で、ある恐るべき計画は実行に移されるのであった……。

この映画には、人間の生命に対する尊厳と………其れが呆気なく崩れてしまう
現実のギャップが痛ましい程鮮烈に描かれております。
と………言うのは、冒頭の森の中、赤軍兵士を音も立てずに殺す場面が描かれ
ているのですが、その殺す際に敵兵に対するささやかな敬意が見え隠れするの
ですね。
本当に小さい描写ですけれども、背後から忍びより口に手を当てて、心臓部に
ナイフを刺す。死んだのを確認したあと、死人の服の上をトントンと叩く……
何の悪意も無いけれども自分達が生き残る為に殺すという感じが良く出ている
と思ったのです。

それがあって……砲弾を受け、塹壕での白兵戦の描写には、ペキンパーの編集
魔術と相俟って、奇跡的な位効果を上げているんです。この白兵戦の場面です
が、『ワイルド・バンチ』で一躍伝説となった「死の舞踏」を更に向上させた
ものなんですね。スローモーション、秒刻みのカット割、塹壕での死、生き残
る為に機関銃を撃ちまくる兵士……此処には敵も味方も区別がありません。
「生きる」か「死ぬか」の一本の細い死線があるだけなんです。そうした光景
と対比させるかの様に安全な壕の中での描写を素早く入れることにより、「死
の舞踏」が一段と映えるのですよ……。銃撃戦だけで落涙するのは、『シュリ』
以来久方ぶりのことです。

それぞれにキャラクターも立っており、観直せば観直す程味わい深い人間像ば
かりでして、とりわけ、マイヤー少尉の過去は何があったのか?と掘り下げて
みたい要求に駆られております。

あと、今回気がついたのは、メキシコに対する深い愛着が見え隠れしているこ
となんです。女兵士達が居る小屋を襲撃するシーンがあるのですが、この際に
つがいの鶏を映すのですけれども、この間合い……そして鶏の動きは、ペキン
パーが影響を受け、また与えたメキシコ映画の撮り方なんですよ。

来年には一般公開が始まりますので、是非この機会に御鑑賞願えることを切に
願って止みません。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(11月25日 シネカノン試写室にて鑑賞)


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