(宝)『戦争のはらわた〜Cross Of Iron』

「映画」と言うメディアが生まれてから、100年以上の月日が経過しており
ます。そのジャンルは、SF,ホラー、文芸物、ドキュメンタリーと様々に分
かれるのですが……「戦争映画」と言うジャンルの中から、一本だけ永久に遺
したいフィルムは?と聞かれたら、ぼくは『戦争のはらわた〜Cross Of Iron』
を推薦することでしょう……。

個人的には、99年公開された『シン・レッド・ライン』の方が好きなのです
が、様々な要因……「判りやすさ」、「戦争の残虐性」、「個人が歴史に果た
す役割」……そして、米国の映画にも係わらず、独逸軍を主体にした映画と言
うことで、その功績は計り知れないものがあると考えております。

二度目観ると様々なことが判りかけてくるものでして、この映画では戦闘時
(?)と平時(?)の時のロシア兵への扱いが異なるのですね。

一回目の感想にも書いたことなのですが、冒頭シーンを初め、戦況が悪化して
いない時には、ロシア兵側にも殺される前に「人間」としての顔を与えている
んですよ。決して「悪逆非道」な殺戮マシーンとして取り扱っていないのです
ね。ところが……捕虜になった少年兵を逃がす場面からロシア兵の攻撃が始ま
り、戦闘シーンになると敵も味方も判らない文字通りの白兵戦への描写と雪崩
れ込みます。ようやく、ここで敬愛するマイヤー中尉の死が確認出来ました。
(涙)

それと,やはり細部に渡ってのキャラクターの描写が的確です。シュタイナー
伍長とシュトランスキー大尉の地下壕での対立シーンでは、マイヤー中尉は,
シュトランスキーを注視し、ゲイのトリービッヒ中尉はシュタイナーの方を注
視しているのですね。これ……考えてみれば良く判ることでして、自分が性格
を把握している人間にはこうした場面では目を向けないものなんです。むしろ、
出方が判らない敵対する人間の方に自然に目が向きます。それを、ほんの1秒
足らずの数カットに分けていれているだけあって、クライマックスのあのシー
ンが俄然説得力が出てくるのです。

ただ、今回観た感じではシュトランスキー大尉のキャラクター描写は抜かりあ
りませんでしたが、副官のトリービッヒ中尉(ロジャー・フリッツ様)の描き
方が時代もあるのでしょうが、勿体無いなぁ……と思うのですね。「南仏に帰
りたい」と言う一念で司令を出すのでしょうが……その前にちょっと葛藤を示
す場面が欲しかった気が致します。

確かに小心者ではあったのでしょうが、何度か「気の迷い」を示すシーンがあ
りますし、部下からも半分馬鹿にされているのでしょう……。だからこそシュ
タイナーとは違った意味でのフィードバックがあったと思うし、そこまで示さ
なくても良いから、ほんの数カットあれば良かったのですが……時代と言うも
のなのでしょうね。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年2月19日シネアミューズにて鑑賞)

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