(絆)『カーテンコール』

東京の出版社で働く香織(伊藤歩御嬢様)は、雑誌に掲載した
スクープ記事が原因でしばらく福岡に異動することになった。
彼女が行くことになったのは、福岡のタウン誌での仕事。そこ
で「懐かしマイブーム」を担当することに。読者からの葉書
を読んでいると、一通が目に留まる。そこには、昭和30年代
後半から40年代中頃にかけて、下関の映画館・みなと劇場に
いたある芸人のことが書かれておりました。興味を覚えた香織
は、福岡から近い下関へ取材に行く。そして下関は、父親
(夏八木勲さま)がひとりで暮らしている香織の故郷でも
あった場所。みなと劇場へ訪れた彼女は、そこで昭和33年
から今までずっと働いているという女性、宮部絹代(藤村志保
御嬢様!)に出会う。そして、絹代から映画と映画の間の繋ぎ
として登場する幕間芸人として人気のあった安川修平(藤井隆
さま)の話を聞き彼に対しての興味が持ち上がるのでありまし
た……。

監督&脚本の佐々部清さまなんですが、原田眞人監督同様に
作品の出来不出来に極端な揺れ方のある人でして、前作の
『四日間の奇蹟』は、どーしようもない駄作でありましたが、
今回同じ人が撮ったのか?!と思える程に出来栄えが素晴らし
いんです!

まず素晴らしいところは、この映画、過去に対するノスタル
ジーだけで終わっていないところなんです。昨日観た『ALWAYS
三丁目の夕日』は、過去から一歩も踏み出していないんですが、
この映画に関しては、現在があって、言わば取材者である香織
が藤村志保御嬢様演じる、もぎり嬢の絹代から過去の出来事を
聞くと言う構成になっていて、「一人称の語り」の為、スーッ
と現在から過去への「時の流れ」の移行が実にスムーズに行わ
れているんですね。そして絹代が語った「ある事件」によって、
幕間芸人安川修平誕生に繋がってゆきます。

映画全盛の頃は売れっ子だった安川も、映画の衰退によって、
段々と隅っこへ追いやられていくのですが、その描き方も実に
愛情溢れるだけでは無く、日々の生活と言うリアルな側面も入
れているんでごく自然に彼のその後について観客は知りたくな
る次第。そうして映画は中盤以降……芸人「安川修平」とその
娘である美里(鶴田真由御嬢様)との引き裂かれた絆について
入っていく次第。

言わば2段構成で描かれているんですが、映画としての王道を
守る為にちゃんとラストでは繋げていますんで御安心下さい。



やっぱり……ブランクがあるんで、書き方が変わって仕舞いま
したね。本来の自分の書き方に戻すならば、最初のヒロインで
ある香織が「みなと劇場」を訪れ、『あの子を探して』と『ブ
エノスアイレス』と言う二本立ての場末の映画館を訪れるとこ
ろで、「みなと劇場」の壁面に「東宝」「大映」「東映」「松
竹」と映画会社のロゴが刻まれているところで既にヤバイ(^^;

そして昭和33年……今は初老を迎えてしまったもぎり嬢の絹
代が白黒のフィルムで若かりし頃のお姿を映し出した瞬間……

これなのよ!!!\(^o^)/と歓喜の涙がとめども無く溢れ出
て仕舞ったのですねぇ。回顧趣味と言えばそれでしか無いんで
すが「大河浪漫」が3度の飯よりも好きな自分としては、これ
を見せられたらもう駄目……(号泣)

過去のノスタルジーだけでは無く、「昭和」と言う時代が産み
落とした「暗部」によって父と娘が引き裂かれ……かつて自分
が行った仕事で「人の絆」を引き裂いてしまった香織が、その
「父と娘の絆」を取り戻す為に奔走し、香織の父……そして香
織の初恋の相手とも絆を取り戻していく過程は、『愛を乞うひ
と』以来のインパクトがあるものとなっております。

今年に入ってから暫くのブランクが空いてしまって今一つ信憑
性が欠けるかもしれませんが、今年のベスト1候補として強く
推薦させて頂く所存です。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2005年11月14日 新宿シネマミラノにて鑑賞)

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