(霧)『日本の黒い夏−冤罪ー」

1994年6月27日夜、長野県松本市で起きた「松本サリン事件」は、多数の死傷
者を出す大惨事となった。そして事件の第一通報者で、被害者でもある神部俊夫
(寺尾聰さま)が被疑者不詳のまま警察により殺人容疑で家宅捜索をうけた……。

ハイ……そうなんです。「カルト集団」となっておりますが、当時オウム真理教
が起こした裁判官官舎襲撃事件を元にして、二人の高校の放送部員エミ(遠野凪子
御嬢様)とヒロと、ローカル局の報道部長の笹野誠(中井貴一さま)とその部員たち
によるディスカッション・ドラマです。
平石耕一の戯曲『NEWS NEWS―テレビは何を伝えたか―』(東京芸術座公演)を原作
にしたと言うことで、舞台劇らしい構成の作品です。

舞台劇を映画用の脚本に直したのは、”巨匠”熊井 啓御大……。まずは無難な
仕上がりでは無いでしょうか?(^^;;
と………言うのは、「話の展開」としては、正攻法で良いとは思うのですが、
屋外シーンでは無く、屋内シーンに難アリなんですよん。

「事実」としては、過度に報道された事柄なんで(自分も被疑者と思っていたし)
大体の事の経緯は知っているんです。問題なのは、予算が無かったのか?舞台と
なるテレビ局がホント……新聞社にしか見えない事なんです。『破線のマリス』
の場合、ミステリーとしては、全然評価していませんが、舞台設定は完璧でした。
そして、テレビ局ならではの盛り上げ方。「ビデオテープの編集」→引き渡しが
何か余裕あるんですね。(笑)
ただ……買うのは、編集部員が階段を使っているところ。正攻法その侭に天井から
階段を俯瞰で撮る手法は、老いたりとも言え「反骨心」消えずでして、これは好き
です。

そして、「新聞社は謝罪文を出したけれども、テレビ局は出していないでしょう」
云々のシーンで、笹野部長が広げていたのは「読売新聞」(^^ゞ
こりゃぁ……不味いでしょう……と思っていたら、ラストでスンナリ謎が解けま
した(笑)協力が「朝日新聞社」と「中日新聞社」なんで、「読売は逝ってよし!」
のおそるべき構図(笑)。日活は恨みでもあるんでしょうか?<結構、この類のネ
タは好きなもので。(^^ゞ

そして、何よりも凄いのは……「再現シーン」なんです。これ……リアルだから
凄いって言うんじゃなくて、「石井輝男先生化」しているからなんです。
「カルト教団」としか言っていないけれども、ある意味で『地獄』とタメ張れる
ような描写ですよ。両巨匠とも真面目なのが判るだけに、その出し方の違いと類似
点との比較をすると本編よりも面白いかも知れない。
ホント…オウム事件って、今考えると「馬鹿げたことを大真面目に遂行していた」
凄さがあるんですね。だから当時は戦々恐々としていたニュース・フィルムも今
見ると御笑いのネタにしか為らないんです。

何だかんだと楽しみながらも文句を付けてきましたが、流石、巨匠と思ったのは
役者の使い方なんですね。吉田警部を演じた石橋蓮司さまは、どの役でもソツ無く
こなせる名優ですが、永田弁護士を演じた北村和夫さまは、最近の映画を観る限り、
「舞台栄えはするけど」だったのですね。舞台の芝居をしている感じなんですよ。
ところが「弁護士」と言うのは、半分演じていなくては為らない職業なんで、それ
が気に為らないんです。ネーム・バリューだけで無く「実」を伴った芝居でした。

「裁判映画友の会」広報担当 大倉 里司
(2001年3月31日 渋谷東急3にて鑑賞)

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