(父)『DDLJ〜ラブゲット大作戦』

本日、去年の東京ファンタスティック映画祭で見逃した『DDLJ〜ラブゲッ
ト大作戦』を遂に鑑賞いたしました。こういう映画を傑作と呼ぶのでしょう(^^)

印度映画は、一昨年の『ラジュー出世する』からの出会いで、かれかれ15本
程度の鑑賞歴なのですが、故ラージ・カプール師匠の『ボビー』と『わたしは
ピエロ』を足した様な出来の良さ。本国で大ヒットだった言うのも十分に肯け
ます。

舞台はロンドン。印度から英国に渡ってきたバルデーヴ・シン(アムリーシュ
・プーリー閣下)はロンドンで一人鳩に餌をやるのが日課となっておりました。
住んでいる場所はロンドンなれど、心は常に故郷のバンジャブにあり、何時の
日にか故郷に錦を飾って帰国する日を待ち焦がれていたのです。
彼には、愛する妻と家族がおり、中でも美しく育った長女シムラン御嬢様(カ
ジョール御嬢様)との結婚に夢を託す日々。

やがて………故郷から一通の手紙が届きます。それは、親友からのもので息子
が大学を出たのでそろそろ縁談を………と言うもの。

シムラン御嬢様も、愛する父の頼みならば………と言うことで、縁談を受ける
のですが、印度に渡る前に独身時代最後の思い出として、欧州旅行をお願いす
る。が、何と此処でラージ(シャー・ルーク・カーン様)と運命の出会いをす
ることに………最初は刺々しかった二人の関係も旅行の終わりに近づいて「愛」
の芽生えを自覚する。

しかし、シムラン御嬢様の父、バルデーヴはそれを許すわけは無く、一家揃っ
て印度に旅立ってしまう………ラージはシムラン御嬢様の家を訪ねたが、玄関
にはスイスでの思い出のカウベルが飾られていた………何としても奪取する。
と、ラージは胸に誓うのでありました。

(休憩)

と………こんな筋立てなのですが、これほど迄に良く出来た脚本は久々に御目
に掛かりました。全てのキャラクター造形が出来ているのです。
自分にとって脚本が良く出来ているか否かの分かれ目は、物語に矛盾が無いか
どうかでは無く、登場人物の「過去」が描かれているかどうか?なのです。
その意味でほぼ満点に近い仕上がりとなっております。

ヒロインを演じたカジョール御嬢様も、「内面から出る美」で魅了致しますし、
シャー・ルーク・カーン様も黄金期のトム・ハンクスが演じていた様な役柄、
すなわち最初はふざけていても、段々と人生の重みに気が付き変化してゆくと
言う役どころを上手く演じております。
さらに、シムラン御嬢様の母を演じたラージヴァンティ様が発せられるセリフ
の重み「父は最初は男と女の間に差が無いと言っていたの。でもそれが間違い
だということに気が付かされたわ………」これは、『夜半歌聲』とか『黙秘』
に繋がる「女の哀しみ」を実に見事に出した珠玉の御言葉です。
かと言って………旦那様であるバルデーヴ様が決して粗野で、妻を蔑ろにする
男性かと言えば決してそうでは無いところが深いのですよ。言わば影の主役は、
アムリーシュ閣下が演じたこの父、バルデーヴ様と言っても過言ではありません。

故郷に錦を飾る迄は戻るまいと決意し、英国紳士風の格好をしながらも、「異
邦人」としてどこにも属せない男の悲哀を、冒頭に鳩に餌をやるシーンだけで、
十二分に体現しております。
家に戻れば印度歌謡を聴くのですが、娘は英国風の生活しか知らず、ロックを
掛けている。
ひとりで、先祖から受け継いだものを守ろうとしている後姿の孤高さ。観なが
ら何度と無く涙が込み上げてくるのを感じました。

悲劇を生み出そうとしているのでは無く、各人がそれぞれに幸せを求めようと
足掻きながらも………意識、性別、世代等によってずれが生じ、悲劇を生み
出してゆく構図。それを、一組のカップルによって、何とかその障壁を乗り越
えていこうとするプロセスが「意味のある」歌と「舞ひ」を組み合わせながら、
一つ一つ丹念に描かれてゆく手腕は22歳の監督が撮ったとは俄かには信じ難
いものがあります。

このアーディティヤ・チョープラー監督は、故ラージ・カプール師匠に次ぐ早
熟の天才児の気が致します。\(^0^)/

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(10月17日 新宿東映パラス2にて鑑賞)

BGM:OST:『DDLJ』よりラター・マンゲシュカール&クマール・サヌー歌唱
『トゥジェ・デカ・ト』

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