(笑)『バイバイ、ジャック』

呑んだくれで、毒に満ちた赤ら顔のコラムニスト、ダン・スターキー(デビッ
ド・シューリス様)は、ベルファストの新聞社に席を置かせて頂いている身。
時は北愛蘭土初の首相選の真っ最中。新聞社としては全社一丸となって、ブリン
候補(ロバート・リンゼイ様)を推しているのですが、反骨の士であるスターキー
は茶化した記事を書き編集長から雷を落とされる……違ったネタを探してこい
と言いつけられ、公園でビールを片手に呑んだくれておりましたが、美大生の
マーガレット(ローラ・フレイザー御嬢様)をナンパし、奥方に隠れて浮気成功。
だが……浮気の最中にピザ屋に寄ったその隙にマーガレットは何者かに惨殺
されてしまう。彼女が最後に言い残したメッセージは「Divorcing Jack」……
「離婚したジャック」とは一体誰の事??そして、何とマーガレットの父がブリン
候補の側近だったことから、事件はテロ扱いをされ、警察、IRA(アイルランド
義勇軍,ULF(アルスター義勇軍)をも巻き込んだ大陰謀戦の幕が落とされよう
としていた……

予め申し挙げておきますが、最初から最後まで「離婚したジャック」は、一度も
姿を出さないのです。(笑)タイトルに釣られて観に行って怒る方も居られるか
も知れませんので予防線。(^^ゞ

実にノリの良い映画です。原作&脚本を書いたのは愛蘭土きっての人気作家コリン・
ベイトマン様なのですが、その語り口たるやドナルド・ウェストレイクをも彷彿と
させる程に軽妙洒脱でなお且つ「粋」なんですね。

北愛蘭土を舞台にすると、やはり現実がああですから、どーしても「社会派」に
なってしまう傾向があるんですけれども、この映画の凄いところは、それを全て
踏まえた上で笑い飛ばしている点なんですよ。

例えば、スターキーが浮気したことを知り、奥方がマーガレットのフラットに
抗議行動を取るのですが……その際にある物を投げ入れるのです。ぼくも、マー
ガレットも最初は「銃撃に遭ったかと思った………」のですが、何とジャガイモ
でして1845年のジャガイモ飢饉の風刺だなぁ……と笑ってしまいました。
(この年に大飢饉が発生し、英国側はカソリックを棄教すれば食料を与えるとの
行動に出た。スープを貰うことは裏切りを意味するのですね。これによって米国
へ移住した愛蘭土系移民が増加したのは史実です)
で……落ちているジャガイモを見てスターキーはこう呟くのですわ「随分と高い
イモを奮発したなぁ(笑)」と………この映画全編、そうした「政治ネタ」&
「宗教ネタ」の雨あられ状態。ここまで凄いのは、『アメリカンウェイ』以来の
ことです。

キャストもまた凄くて、デビッド・シューリス様が軽い!(笑)今迄のイメージ
が大真面目な青年ばかりだったので、これは意外!そして、昼間は看護婦、夜は
ストリッパーとしての顔を持つクーパー(レイチェル・グリフィス御嬢様)の
カッコ良さ!

内容が通好みなんで、ある意味で見る人を選ぶ映画でしょうが、嵌まってしまっ
たらトコトン笑えます。劇場公開は無理かもしれませんが、せめてビデオ化に為
らないものでしょうか………

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年4月4日 ケルティック・フィルム・フェスト 草月ホールにて鑑賞)

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