(信)『ダスト』

時は20世紀最後の年の紐育。麻薬の売買で失敗し、借金に首が回らなくな
った黒人の青年エッジ(エイドリアン・レスターさま)は、押し入ったアパ
ートで、その部屋の住人の老女アンジェラ(ローズマリー・マーフィーさま)
に逆に銃で脅され、彼女の話を無理やり聞く羽目になる。

それは、真実とも作り話ともつかないある兄弟の物語だった。
1900年アメリカ西部。ルーク(デヴィッド・ウェンハムさま(*^^*)ポッ)
とイライジヤ(ジョセフ・ファインズさま(*^^*)ポッ)という二人の兄弟がいた。
やがて………地元の売春宿のフランス人娼婦リリス(アンヌ・ブロシェ)を巡り
二人は対立することに………
やがて、理由もいわずルークは、アメリカを去り、動乱のバルカン半島に渡った。
革命軍の指導者の首に賭けられた賞金12000ドルを狙う賞金稼ぎとなって……。
話の途中で発作を起こして倒れたアンジェラを病院に運ぶエッジ。彼は金貨の隠
し場所を教える事と引き換えにアンジェラの話の続きを聞く内に次第に興味の
方向が変わってくるのを感じていた………

通常、此方にアップするときは………誰かに薦めたいとか……この怒りを共有
したいって下心があるんですが、この映画に関しては………まず、誰に薦めて
良いのかターゲットが定まらないんです。(笑)

この監督は、ミルチョ・マンチェスキーさまでして、『ビフォア・ザ・レイン』
が第一作。バルカン半島にありますマケドニア出身の方です。
必ず………引き合いに出されるであろう前作なんですが、これ……正直言って
ピンと来なかったんです。

だからなんでしょうが………「大河浪漫」と言うジャンルであるにも係わらず
期待値は半分半分でした。

ただ、今回驚いたことがありまして、ジョセフ・ファインズさまとデヴィッド・
ウェンハムさまをはじめとして、役者の味を最大限に引き出しているんですよ。
これには嬉しくなりましたねぇ。
殊にジョセフ・ファインズさまは、同じ兄弟でも全然似ていないと定評がある
レイフさまの弟(笑)今回は彼の役柄の中でもベストです。
少ない出番なんですが………無言の演技でこれほどのものを引き出せるとは、
夢にも思っていなかったんですよ。

そして………デヴィッド・ウェンハムさまがセクシー(*^^*)ポッ
「殺すことは出来るが、愛することは出来ない」傍迷惑な存在でありながらも
どこかしら憎み切れないルークというキャラクターの全てを掴み切っています。

このルークが主役と言う形を取るんですが………ルークを縦軸にして、100
年後のエッジとアンジェラの関係を横軸に………そして斜めに弟イライジャを
挿入して、激動のバルカン半島史を刺繍で編み込んでいる。

但し………決して一筋縄では行かないんですわ。時制はボンボン飛ぶし………
アンジェラの「語り」によって「回想劇」はコロコロ変わるし(笑)結構忙しい
展開なんです。そして、これが鍵なんです。

小説作法の一つに「点いたタバコの火は必ず消しなさい」と言うものがありま
して、作中で起こった出来事は必ず作中内で処理を終えるのが原則とされてお
ります。

それからすると………この映画、一見するとルール違反の嵐のように思えます
が、果たしてそうでしょうか?
そもそも「回想劇」からして、「映画の中で描かれる事実」を知るものは誰一
人現存していないんです。アンジェラの話が老いたイライジャからの「伝承に
よる事実」としても………本当に事実だったかどうかは誰も判らない。
ましてや、エッジにしても………金欲しさに盗みに入って、無理矢理聞かされた
話なんで当初は「事実」であることも疑っていた。

ですが………「事実」であることを捨てた時点で「真実」は光を放つのです。
どんな事柄にも「事実」は一つしかありません。但し、「真実」は人の数だけ
あるんです。エッジが「事実」として「金貨」を見つけた時点で「事実から真実」
への昇華が行われたと思っています。

長い長い「伝承による事実」がアンジェラの口から語られることが無くなった時、
エッジは「伝承から生まれた真実」を語りはじめます。

それは………飛行機の中で出会った女性にそれを語り継いでいくのですが………
その時に生まれた「奇蹟の壱枚」!\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/
\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/

そして100年前のマケドニアでイライジャが見上げた上空………

これには参りました!完敗です(超感涙<涙腺堤防大決壊\(^0^)/)

長くて広大だった大河浪漫の源流となる泉に顔を浸し、感謝の念が沸き起こった
記念すべき一日となりました。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2002年7月17日 恵比寿ガーデンシネマ スクリーン1にて鑑賞)

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