(報)『エドtv』

「普通の人の家が見たいなら、親類の家に行く」……1953年CBSの番組『パ
ーソン・トゥ・パーソン』に寄せられた投書より引用。

時は、現代……ケーブル・チャンネル「トゥルーTV」は、放送開始以来、絶
望的な視聴率低迷状態。何とかして起死回生の突飛な番組を!しかも、予算が
掛からず高視聴率を稼げれば言うこと無し♪世の中にそんなウマイ話が転がっ
ている訳ナイ……と思っていたら、一人の敏腕女性プロデューサーが飛んでも
無い企画を出した。何と……普通のヒトの日常生活に張り付いてしまおうと言
う訳。そこで浮上したひとりの男エド(マシュー・マコノヒー様(*^^*)ポッ)
彼の名を取って番組名は『エド・tv』と名付けられ、兄であるレイ(ウディ
・ハレルソン様(*^_^*)(ポッ))の彼女であったシャーリー(ジェンナ・エルフ
マン御嬢様)と恋仲になった頃から視聴率は急上昇するのでありました♪

この映画……どうしても、『トゥルーマン・ショー』と比較されてしまうし、
自分も観るまでは「二番煎じ」的な先入観を持っていたんです。m(__)m
違うのは、『トゥルーマン・ショー』のジム・キャリーが、自分が映されてい
ることを知らないのに対して、此方は知っている……その差かなぁ?と思って
いたら、これが全然違うんですよ。

『エドtv』の方は、比較すべき対象は、『トゥルーマン・ショー』では無く、
76年のシドニー・ルメット渾身の名作『ネットワーク』と比較することに因
って本質が見えて来るのです。

冒頭に挙げた53年は、冷戦構造下のアメリカでは、人々は「作られたもの」
を好む傾向があったと思うんですわ。ところが……まあ、ベトナム戦争がテレ
ビ放映されることに因って「真実の姿」を求める様に嗜好が変わってきたと判
断しております。『ネットワーク』を語るには、70年代への理解が無いとピ
ンと来ない箇所が多いと思いますし、この『エドtv』は3大ネットワークか
ら、多局化してしまった現代を踏まえての映画なんです。ここが大きな違い。

ただ……影響は間違い無く受けています。一つ目は、両作品共にキーを握るの
は女性プロデューサーである点。もう一つは「視聴率至上主義」を局のトップ
が考えている点。そして……テレビの影響によって、視聴者が動いてしまう点
なんですよね。『ネットワーク』では、プロデューサーのダイアナ(フェイ・
ダナウェイ姐さん)が、全米各地(バートン・ルージュ、サンフランシスコ……)
にある地方局から電話で反響の大きさを聞いて狂喜する場面がありましたが、
今回は全米各地にある視聴者の反応を直にカメラで映すという手法を用いてお
ります。

そして……もう一つは、人々の欲望に因って「放映内容」が益々過激になる点
です。『ネットワーク』では、キャスターのハワード・ビールの自殺予告から
事件が勃発し、「利潤の法則」に乗って誰も止められないシステムの怖さを描
いておりましたが、今回は、これに乗じてハリウッド進出を目指す女優ジル
(エリザベス・ハーレー御嬢様)の出現に因ってポルノ紛いの生中継まで行な
ってしまう怖さがあるんです。

最後のオチは、あくまでも楽観的にしておりますが、それは視聴者には「観な
い権利」も委ねられていると監督のロン・ハワードは、そう語り掛けてくる気
が致しました。

家族ドラマとしても面白い作品ですが……自分としては、活字ジャーナリズム
の世界を扱った『ザ・ペーパー』以上に、テレビ・ジャーナリズムの可能性と
危険性に関して警鐘を鳴らした作品であると考えております。

「裁判映画友の会」広報担当 大倉 里司
(2000年12月29日 ビデオにて鑑賞)

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