(旅)『ラテンアメリカ〜光と影の詩』

もう終了してしまいましたが、草月ホールにて「ラテンアメリカ・スタディー
ズ」と言う企画があり、その道に御詳しい方のレクチャーを聴いて映画を観る
と言う試みだったのですが、この『ラテンアメリカ〜光と影の詩』は、南米文
学の紹介では泣く子も黙る野谷文昭先生だったのですね……(^^ゞ

先生曰く、「これは全ての要因を包みこんだ、言わば全体映画だ」とおっしゃ
っておられましたが、正にその通り!\(^0^)/

ここまで魅惑的な「マジック」を味わったのは、去年大井武蔵野館で幸運にも
観ることが出来た『サンタ・サングレ〜聖なる血』、今年に入ってからは、生
涯のベスト1入りを決めた『シン・レッド・ライン』、そして、今年の日本映
画界の金字塔である『双生児』以来久々のことです。

此処は地の果て……南米大陸最果ての地フェゴ島・ウスワイヤに住んでいる少
年から青年に変わろうとしている時期を迎えたマルティンくん(ウォルター・
キロス君)は、とてつもなく変な高校で授業を受けている身。母(何と!ドミ
ニク・サンダ様が!)は父を愛していたが、今はうだつの上がらない義父と再
婚している身。島に居てもと思ったマルティンくんは、妊娠させていた彼女が
堕胎したこともあって、一人島を離れ、父の元へと自転車で南米大陸を縦断す
ることに……そこで出会った数々の現実と虚構を眩いばかりの映像と、天才的
なイマジネーションによる風刺で綴った文句無しの一大叙事詩。

風刺と書きましたが、ここまでの「政治批判劇」を観るのも久々で、非常に嬉
しく為って参ります。\(^0^)/

コケにされまくっているのが、蛙大統領として登場の、アルゼンチン大統領カ
ルロス・メネム氏なんですが、御気の毒と言う感じもするのですが、日本の投
資家も絡んできておりますので、多少辛辣にやっても許します(笑)
何故、日本の投資家が……?と言えば、経済政策の破綻に因って、何と!島が
日々傾いているんですね(笑)そんなところには暮らしておれぬと感じた島民が、
「この島売ります」と言うプラカードを持って立っているシーンが挿入されて
いるのですが、最後に片仮名で「ウリマス」があった!(^^ゞ

直接日本企業が何処まで介入しているのかは定かでは無いのですが、「経済援
助」の美名に隠れて利潤を上げている一部投資家への風刺としては、これ以上
のものは無いでしょう。

IMFからの借入れによって首都ブエノスアイレスは、水没し……あたかも水
の都ベネツィアを彷彿とさせる光景ですし、それだけに留まっていない所が立
派なんです。と………言うのは、水没してしまったブエノスアイレス郊外で、
マルティンくんは実の祖母と会い、父の面影を巡らせているんですね。

こうした情景をも含め、政治、経済のみならず……インディオ抹殺の歴史、民
族独自のアイディンティティをも含め、この映画はマルティンくんの自分探し
の旅でもあり、立派に「父子もの」としても成立しているんです。

かつて、ニフティで活動していた時分に、この映画を「生涯のベスト1」に推
していた女性の方が居りましたが、ニチェボ様の『サンタ・サングレ〜聖なる
血』と同様に、何方かが「生涯のベスト1」と言い切った作品には、それだけ
の力があると感じた素晴らしい作品です。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(11月20日 ラテンアメリカ・スタディーズ 草月ホールにて鑑賞)

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