(団)『es(エス)』

1971年、スタンフォード大学心理学部で、ある実験が試みられた。
被験者は、新聞広告によって集められた24名。
彼らは、無作為に「看守役」と「囚人役」に分けられ、監視カメラ付きの
模擬刑務所に収容された。二週間、いくつかのルールに従いながら自分の
役を演じること、それが彼等に与えられた仕事だった。しかしわずか7日目
で、実験は中止。現在、この実験は禁止されている…。

これが実際の話………キワモノ好きだったら、一度は耳にしている実験です。

映画なりの脚色をしており………例えば、モーリッツ・プライプトライさま
(*^^*)ポッ演じたタレク(囚人番号77)は、現在タクシー運転手をしており
ますが、その前は雑誌記者をしていたという設定。そして同房の囚人番号38
のシュタインホフ(クリスティアン・ベッケルさま)の正体とは………?
と趣向を凝らしております。

ただ………映画を観終わる頃………或いは中途でも、こうした”脚色”が
非常に有り難いものに思えてくるんですね。そう………これは、10人観た
として9人までが、同じ感想を持たざるを得ないほどのヘビーさがあります。
自分ですら、今回は多数派の仲間入りしよう!と素直に思いましたもの(^^;;

囚人役に課せられた規則は以下の6条

ルール(1):囚人はお互いに番号で呼び合わな<てはならない。
ルール(2):囚人は看守に対して敬語を使わなくてはならない。
ルール(3):囚人は消灯後、会話を一切交わしてはならない。
ルール(4):囚人は食事を残してはならない。
ルール(5):囚人は看守の全ての指示に従わな<てはならない。
ルール(6):ルール違反を犯した場合、囚人には罰が与えられる。


それに対して、看守側は、「暴力の行使は禁止」と「アルコール持ち込み
禁止」だけでして、実際の実験では「三直体制で実労8時間!」と労働
基準監督署が(^o^)と迎えいれそうな好条件♪映画とは違って看守側に
選ばれた人間は「無遅刻、無欠勤」を真っ当したのですから、余程肌に
合っていたと言うべきか………。(^^;;

それに比べて、囚人側は7日間を迎えるまでに脱落者5名だったそうな。(涙)

さて………この映画を観ていて思ったのは、「三人寄れば文殊の知恵」
とか「烏合の衆」とか「窮鼠猫を噛む」とか………「猫にまたたび」とか……
まあ………色々な諺がありますが、囚人と看守の一対一の関係だったら決し
てこうは為らなかっただろうなぁ………と言うのがありますね。
ここに「集団の魔力」が秘められているんです。

これも実験なんですが………鼠を檻に入れて檻の下から火を点ける………
とは言っても、この檻には一箇所だけ「脱出口」が設けられておりまして、
一匹だけだと助かる。

で………しばらくして、その一匹の”被災鼠”と初体験の五匹で計六匹に
なりますと判断力が低下して、全頭が焼死したんです。

鼠でしょ?と思う莫れ!歴史を振り返るまでも無く………例えば会議の席で
「何か反対しずらいなぁ………。でも、自分だけかなぁ?(^^;;」と思って
あとで隣に座っていた同僚に意見を聞くと「やはり………自分と同じだった」
でも………満場一致の賛成!ってことってありませんか?

”平常時”ですらこうなんですから、人工的にでも作り出された”異常時”
はどうなるのか?

映画終盤に検察当局に連れていかれた「看守役」が印象的ですが………
これって、有罪にはなるでしょうが、「執行猶予」が付くと思いますよ。
それよりも問題なのは、安直な考えで「闇」の部分を引き出そうとした
教授(エドガー・ゼルゲさま)でしょう………

現在も訴訟中の問題を抱えているケースの為、アメリカでは一般公開が
出来ないらしいですが、「刑務所問題=とりわけレイプ問題」を考える
切っ掛けとして、是非この映画が全米で公開されることを強く望みます。

「裁判映画友の会」大倉 里司
(2002年7月3日 シネセゾン渋谷にて鑑賞)

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