(倒)『エスペランド・アル・メシアス』

シンガポールに本社を置く巨大銀行が倒産した。ユダヤ人の青年アリエル(ダ
ニエル・エンドレール様)は、父親が全財産をその銀行に預金していた為、蓄
えが無くなっていた。一方、銀行員のサンタマリア(エンリケ・ピネイロ様・
熱演!)は、勤めていた銀行が倒産したことにより、奥方からも見放され放浪
者となっていた……夫が刑務所に入っているエルサ(ステファニア・サンドレ
ッリ様・熱演!)は、駅の御手洗いの清掃婦として生計を立てている身……

この銀行の倒産劇は、知り合う筈の無い人々を結び付けていくのだった……

と……書きましたが、ハッキリ言って整合性がまるで感じられない失敗作。各
パート……とりわけサンタマリアとエルサの中年同士の淡い関係は、そこだけ
を抜き出せば、秀作と言っても良い仕上がりでして、去年東京国際映画祭で好
評を博した『アローン〜ひとり』を彷彿とさせる話なんです。ただ、アリエル
のパートとそれに絡む人々のエピソードが希薄で、何故絡んでくるのか?そし
て、パート毎のトーンが急遽コメディになったり、瞬時にシリアスになったり
で性質の悪い短編集を見せられたようなもの。

映画祭日記にもちょっと書いたのですが、『マグノリア』と『バウンド』を足
して二で割って空中分解させたような作品なんですわ。アリエルのパートナー
であるビアンの姐さんとその恋人のパートが、『バウンド』を明らかに意識し
ているんですが……だから何なの?この恋人が話の本筋に絡んでくるのか?と
思いきや全然そうでは無く、またアリエルのユダヤ人社会も……中途半端な仕
上がりにしか為っていないんです。このエピソードをバッサリ切って、サンタ
マリアとエルサの話としてしっとりと纏め上げるべきでした。残念です。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年10月30日 東京国際映画祭 シネマプリズムにて鑑賞 渋東シネタワー3)

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