(魅)『氷の接吻』

『ダブル・ジョパティー』とハシゴしてしまったのが、この『氷の接吻』同じ
アシュレイ・ジャッド様の主演作ですが、監督によって此れほどまでに「化ける」
ものとは……(驚愕)

監督&脚本が……あの『プリシラ』のステファン・エリオット様でして、実に
クラシカルな風味のあるファーム・ファタール(魔性の女)物の第一級のサスペ
ンスとなって仕上がっております。

と………言っても「正統派サスペンス」を期待すると肩透かしを食らいますが、
今年に入ってから一番ドキドキした映画はこれなんです。

ワシントンD.C.の英国大使館国際情報部で働く諜報部員”EYE <アイ>”(ユアン
・マクレガー様)は、局長の息子が信託資金の遣い込みをしているので調査して
欲しいとの要請を受ける………その張り込み中、ジョアナ(アシュレイ・ジャッ
ド様)が「メリー・クリスマス・パパ!」と叫びながら局長の息子を惨殺すると
ころを目撃する……。一度は報告しようと決意したのだが……蒸発してしまった
娘の幻影の声に負けて……彼女を追うことに……それは、見えない赤い糸が知ら
ず知らずのうちに二人を結びつけてゆく作業に他ならなかった……。

『ダブル・ジョパティー』では、何の魅力も無かったアシュレイ・ジャッド様
が見事に「ファーム・ファタール」を演じていらっしゃるのには正直申し上げて
驚きました。

<アイ>を演じたユアン・マクレガー様も、妻と共に去っていった娘の幻影に悩ま
しつづけられ……映画の前半でその「幻影」が登場するのですが、ぼくはアトム
・エゴヤンの諸作品……とりわけ『スウィート・ヒアアフター』にも似た匂いを
感じたのです。

らせん階段、盗聴、隣部屋、殺人……と言うサスペンス映画の「御約束事」を奇
麗に守りながら「独自の世界」を作り出すステファン・エリオット監督の才気に
は恐れ入りましたと頭をさげちゃう。

全米各地の色々なところを廻るのですが……その展開のさせ方が「映画的」な愉
悦に満ち溢れ、ワシントンDCに掲げられたボロボロの星条旗に「悪意」を見出し、
段々と運命に絡め取られてゆく二人の姿にそこ知れない「闇」を感じる……

1時間47分の映画ですが……まるで見終わったあとは3時間の大作を見終わった
かのような充実感。幾つかの謎は遺された侭ですが……それも良いではないですか。

役者陣も素晴らしく、ジョアナの「原型」を生み出したプロート博士を演じる
のがジュヌヴィエーヴ・ビジョルド様、最後に見せた涙の素晴らしさと果てし
無い闇の世界……ジョアナが唯一本当に愛したであろう富豪のアレックスには、
パトリック・バーギン様、ならず者のヤク中ケアリーには、ジェイソン・プリー
ストリー様が配され、誰一人として「浮いていない」し「主役を崩すことなく
精彩を放っている」正に極上の葡萄酒に酔いしれた気分で劇場を後にすることが
出来ました。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年3月23日 丸の内ピカデリー2にて鑑賞)

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