（魅）『フィフス・エレメント』

皆様、御機嫌如何でせうか？マダム・DEEPで御座ひます。

映画の日と言ふこともありまして、遅巻きながら『フィフス・エレメント』
を鑑賞致しましたの。

初めに申し上げておかなくてはならないのですが、本来わたくしはこの様な
作品は余り好きではないですのよ。でも、この作品には完封なきまでに
酔ひ痴れさせて頂きましたわ。

まずは、何と申しましても、音楽の使ひ方が最高でしたわね。
わたくしが本当に高く評価したひのは、ディーヴァと言ひませうか？
歌姫様が地球人の姿をしていなかったことで御座ひます。

マリア・カラス様を思わせる音階の広さと、超絶的な「コロトゥーラ」
（歌劇の世界で声をコロコロと転がせる技法で、ソプラノの１８番）
を使ひながらも、姿は普通の人類から見たら「美人」では無ひ。
ここが重要で御座ひます。

と申しますのは、勝手な想像で御座ひますけれども、歌姫の設定には
エリック・セラ様のお考えも少しは入つて居たことで御座ひませう。
何故かと言えば歌劇の歴史を辿っていきますと、美人で無ひプリマドンナ
の方はそふ売れなひので御座ひます。
マリア・カラス様も御痩せになるために必死の努力を重ねて参りましたし、
ジョーン・サザーランド様もお顔のせいで人気の方は今一つ。
モンセラート・カバリエ様も御声は優雅ですのに、一般の人気は今一つ。
わたくしの勝手な想像で御座ひますが、エリック・セラ様とリック・ベッソン様
は敢えてこうした形のディーヴァを使うことにより「反逆」を示したかつた
のでは無ひかと考へます。

彼女が美声を靡かせてゐる間に、カットバックで殺人シーンが繰り広げられ
るのですが、この音楽の使ひ方が見事ですわ。（感動）
と、申しますのはアリアの部分に殺害が行われる手法は、『アンタッチャブル』
では、『道化師』の中の『衣装をつけろ』が有名ですが、いずれにせよアリア
の部分だけで聴かせていたのですわ。

ところが今回は、抒情的なカヴァティーナの部分（静かに入る部分）から
入って、アクションシーンが始まると同時にテクノが合流し見事なダンス
音楽となって居るので御座ひます。しかも、嬉しひことに「コロトゥーラ」全開！
これが耳に入った瞬間に、わたくしの心はあのオペラ座に飛んでおりました。
映画と言ふ制約上、両方併せて５分間と言ふ間でしたが、わたくしは酔ひ
痴れ、そして舞ひを舞っておりました。（超本気）

映画の為だけに作曲されたダンス音楽としては、文句無しに今年一番
の出来栄えで御座ひませう。
願わくばロングヴァージョンを作って頂き、巴里の倶楽部にて舞ひを舞ひ
たひと切に願って止みません。

それと全編を彩る中東音楽をアレンジしたスコア。その旋律が耳に心地良
ひので御座ひます。

あと、衣装の方もＪ・Ｐ・ゴルチェ様が気合を入れて作ったことが伺われて
非常に興味深かったですわ。
とりわけ、ＤＪの御姉様でいらつしゃるルビー・ロッドが着ていた胸に真紅の
薔薇をあしらった夜会服が気に入りましてよ。わたくしも一度身につけて
みたいものだと存じます。
ゲイリー・オールドマン様が演じていらつしゃつたゾーグの衣装。そして
彼の配下に履かせている黒のパンツがレーザーを使用し濃厚な「色」を
醸し出しております。これこそゴルチェ様の１８番ですわね。

あと、「騙し絵」を思わせる紐育の未来図。思わず見とれてしまいました。

それと、フロンストン星にありますレジャーランドでせふが、ベッソン様の
隠してゐた「毒」に酔ひ痴れましたの。
と言ひますのは、タイタニックを思わせる豪家宇宙客船で御座ひますが、
歓迎の際に「布哇」（ハワイ）式にレイを首に掛けられますわよね。
リック・ベッソン様の御出身は仏蘭西ですし、この映画の主要舞台は
紐育ですわね。
それからすると、リゾート地として選ばれるべき候補地は、紐育でしたら
フロリダかキューバ辺り、仏蘭西でしたら西班牙（スペイン）か南仏辺り
が妥当な線で御座ひます。
どふ考えても、「人工のリゾート・アイランド」たる布哇が該当する訳に
は参りません。

敢えて聖林によって仕立て上げられた「地上の楽園」布哇のイメージ
を極端にまでカリチュライズしてしまつたところに痛烈なる「皮肉」を
感じるのです。
尤も、これは考へすぎかも知れませんわね。「古典」に忠実に行う
のであれば、白人女性がフラダンスをしなくてはならないでせうから。

お話の方は書ひて居なひつて、わたくしにとつてはどうでも良ひこと
ですわ。

ここまでやつて頂いたのならば、もふ「好きにして頂戴！」つて言つて
しまひますわよ。

『裏社交界の徒花』 マダム・DEEP(HCD05016@nifty-serve.or.jp)

BGM:オリジナル・サウンド・トラック『フィフス・エレメント』より
『ディーヴァ・ダンス』

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