(蔑)『破線のマリス』

首都テレビの看板報道番組「ナイン・トゥ・テン』の中の「事件検証」と言う
コーナーは、独自の切り口で事件の真相に迫り、高視聴率をキープしていた。
そのコーナーを担当しているのが、名編集員遠藤遥子(黒木瞳)彼女は倉科部
長(篠田三郎)の信任も厚かったが、いつもテープをギリギリまで編集し続け
るので現場からは忌み嫌われる存在………だが、テレビ局の掟は「高視聴率」
が命。中々彼女には手を出せるものは居なかった………純風万般そうに見えた
彼女にも一つ苦悩の種があって、別れた夫の間に出来た息子、淳也との面会を
制限されていることだった………。

或る日、郵政省とメディア制覇を狙う永和学園との癒着を追っていた弁護士が
不慮の死を遂げる………それから程なく、郵政省の官僚から内部告発との触れ
込みで一本のビデオテープが持ち込まれる。

そのテープには、殺害された弁護士を内偵する郵政官僚、麻生(陣内孝則)の
姿が写しだされていた………。

と………まあ、粗筋をざっと書いてみたのですが、冒頭部分は非常に良く出来
ております。事件を追っていく内にヒロインが変化を遂げていく様も、極端す
ぎるきらいはありますが………まあ、良いでしょう。

ですが………この映画、非常に重大なる欠陥がありまして、ミステリー映画と
してはじまっているにも係わらず、何と最後迄事件の真相は明らかにされない
のです。(怒)

お世辞にも出来は良いとは言えなかった『冷たい月を抱く女』(原題Malice)
も、お粗末ながらも、一応殺人事件のケジメは付けた上で、もう一つの疑惑
が持ちあがると言う構成になっているんですよねぇ(--;)

この『破線のマリス』ですが………『破綻のマリス』とでも付け直した方が良
いんじゃないかと思える位でして、まあ………最後に一応決着はつけた「ふり」
をするのですが、小賢しいと感じる以前の問題………今迄の2時間は何だった
の??????入場料返せ………(--;)と思いつつエンドクレジットが始まる
と即座に席を外させて頂きました。

『ネットワーク』の域までは期待しておりませんが、せめてケリだけは付けま
しょうね………製作サイドの皆様。主張があるのでしたら、その上でどうぞ(笑)

それに、編集に因って印象が変わるというのは、テレビだけの専売特許では無
いでしょう………今さら、この程度のもので騒ぐほうが、どうかしております。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(10月31日 第12回東京国際映画祭インターナショナルコンペティション)

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