(愛)『フロム・ヘル』

時は、ヴィクトリア朝末期の倫敦。その夜、娼婦や犯罪者たちがたむろする
ホワイトチャペルの通りに、女の悲鳴が響き渡った。のどを切り裂かれた
無惨な死体。その夜から一人、また一人と娼婦たちがナイフの餌食になって
いく。アバーライン警部(ジョニー・デップさま)は不思議な能力に導かれ
るかのように捜査を開始するが、事件がエスカレートするにつれて警視総監
(イアン・リチャードソンさま)ら警察幹部は捜査を妨害しようとする。
街娼メアリ(ヘザー・グラハム御嬢様)と王室の主治医でもあるウィリアム
・ガル卿(イアン・ホルムさま)等の協力もあって、真相を掴み掛けたとき
に思わぬ陥穽が待ちうけていたのでありました。

絢爛豪華な配役陣もさることながら、監督を務めた双子のアレン&アルバート
・ヒューズ兄弟は、大変な力量の持ち主です。一見するとゴシック・ホラー
なのですが、意外な程に描き方はモダンで、且つ正統的です。
「R指定」を避けるため、極力残忍な殺害を描かないようにしているのですが
暗闇に煌くナイフ。殺人現場を検証する捜査官などの群像をコマ廻しにして
抉り取った手法は鮮やかですし、警部の幻覚にはアルジェント師匠の影響が
濃厚に伺えるのがファンとしては嬉しいところ。

さて、歴史上最も著名な殺人鬼は、何故捕まらなかったのか?と言う部分に
ミステリーとしての要因が含まれているため、ここで改行致します。













(事件の真相に触れているため改行)










王家の存在とフリーメーソンが絡んでいたと言う説を取って「体制内部」に
犯人は居たことを示しているのですが、改行したとは言え、犯人の名は明か
せません。ただ……この事件処理の方法を含めて「大英帝国」の欺瞞性と残
忍さをここまで如実に映像に描けたことに自分は最大限の賞賛を致します。
この描き方たるや、「松本 清張原作、山本 薩夫監督作品」でも何ら不自
然でもない「ヤミから闇へ隠蔽する」方式でして、そこに巻きこまれた人々
の悲劇が浮かび上がってくる構図が見事なんです。

まず、ヴィクトリア朝は貧富の差が異常なまでに明確な時代でした。因って
社会的弱者である娼婦は、何の保障もされず、ギャング団からも、そして
殺人鬼からも追われる立場。そこに舞い込んできた「さる高貴な方」の存在
によって悲劇は引き起こされる訳なんですね。

そして、殺人鬼の使用人のネトレイ(ジェイソン・フレミングさま(*^^*)ポッ)
は、地獄のような苦しみを味わいながら生きる為に、殺人の手助けをしなくて
は為らない。最初の登場シーンで「物凄い闇」を抱えて生きている人だなぁ(涙)
と思わせた役作りは見事としか言いようがありません。真の主役は彼です!

全ての存在を知ったアバーライン警部は、愛する人の身の安全を確保する為に
とある消極的な決意をする………愛する人の身の安全を透視したところで、幕
を静かに下ろす。消極的ですが………実際に出来るダンディズムとしては、これ
しか無かったでしょう。そして冒頭の場面と結び付くことにより、哀しいながら
も………自分は平安を見出すのです。

事象的には暗澹としながらも、最後に一筋の光明が差す………良い映画でした。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2002年2月14日 ワーナー・マイカルシネマズ市川妙典スクリーン7にて鑑賞)

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