(舞)『フラガール』

時は昭和40年、福島県いわき市の常磐炭鉱は不況のため大規模
な人員削減が迫っており、起死回生の策を迫られていた。北国に
ハワイのようなレジャー施設をと言う事で当時18億円の巨費を
投じられ常磐ハワイアンセンターの計画が進んでいた。その目玉
はフラダンスショー。東京からSKD(松竹歌劇団)出身のダンス
教師の平山まどか(松雪泰子御嬢様)が招聘され、後にリーダー
となる紀美子(蒼井優御嬢様)を初めとして炭坑夫の娘たちをフ
ラダンサーに仕立てる猛特訓が始まろうとしていたが……。

まず、この映画を知った切っ掛けは、「99円ショップ」にて、
「スパリゾートハワイアンズ」の折込広告の中に、一行「映画・
フラガール」そして音楽は、ジェイク・シマブクロと刷り込ま
れてあったのです。『ナビィの恋』では無いですが、その瞬間に
忘れかけていた「傑作の匂い」を感知するセンサーが久々に蘇
った次第。
舞台となったいわき市の湯本地区には、前の仕事をしていた時に
何度も訪れておりましたが、駅前から温泉が湧き出ている位に
湯量が豊富な地区。斜陽化した産業である石炭から、単に温泉
では無く、一ドル360円時代、「ジャルパック」で行くハワイ
旅行と言うのが庶民の憧れ。それを先取りした先見の明は買い
であります。

さて、話が横道にそれてしまいましたが、とにかくこの映画は
羽原大介さまによる脚本が素晴らしい。良く出来た脚本の御手本
となることでしょう。

最初に東京から来た平山まどか先生が、親が抱えた借金の為
東京の花道を外れて、本人が想像したいた以上の僻地である
この地を訪れ、最初は匙を投げていて、まどか先生もまるでやる
気が無い……ところが、一人で「舞ひ」をしていた先生の姿を
見て4人の生徒が感化されてゆき、それが先生にも伝わっていく。
まあ、これだけでしたらありきたりの脚本でありますが、この
映画の秀逸なところは、まどか先生を初めとする「フラガール組」
といわき炭鉱で働く「地元組」との対立。対立をしながらも、
次第にお互いに妥協点を見出し、問題を昇華させていくプロセス
が実にキメ細やかに描きこまれ、それに色々な登場人物を絡ませ
ていくのでありますが、台詞のある人間で誰一人無駄なキャラが
居ないんですね。ここまでの脚本久々に御目に掛かりました。

そして、「舞ひ」のシーンに華があるんです。
舞ひ手一人一人が段々と腕を磨いていき、最初は見れたもので無
かった「群舞」がクライマックスである常磐ハワイアンセンター
でのオープニングシーンで一斉に開花するシーンはもとより、
「フラ」の振り付けには一つ一つ意味が込められており、それが
画面で「あっ!こういう使い方があったのね!」と再認識させら
れるシーンでは滂沱の涙。

『ブラス』、『リトル・ダンサー』、『遠い空の向こうに』と
何故か炭鉱物とは肌が合わない事が多い自分ですが、これはそん
なことを吹き飛ばしてくれた傑作です。是非御覧になって下さい。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2006年9月23日 ワーナーマイカルシネマズ市川妙典にて鑑賞)

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