(毒)『暗い日曜日』

1930年代末のブダペスト。古都に一軒のレストランがオーブンした。
オーナーの名を取り店名は、ラズロ。店を切り盛りしていたのは、その
ラズロ(ヨアヒム・クロールさま)と彼の女神的存在であったイロナ・ヴ
ァルナイ(エリカ・マロジャーン御嬢様)。
 そんなこんなで順調に店は繁盛しておりましたが、店内には一台のピアノ
があり、それを御飾りにして置くのは勿体無いと、ピアノ弾きを雇い入れる
ことに………その結果選ばれたのが、若きピアニスト、アラディ・アンドラ
ーシュ(ステファノ・ディオニジさま(*^^*)ポッ)だった。

やがて、イロナとアラディは惹かれ合うようになるが、三人が選んだのは、
寛大なラズロの方針で、決別ではなく愛の共有であった。
 イロナの誕生日、お金が無いアラディはプレゼントの代わりに自作の曲
“暗い日曜日”を捧げる。危ういほどに美しい旋律を持つその曲は、ラズロ
の力添えでレコード化され世界中で大ヒットを遂げるが、レコードを聴きな
がら自殺するものが後を絶たず、「自殺の聖歌」という烙印を押されること
に………。

その曲とイロナに惚れこんだ一人の男ハンス・ヴィーク(ベン・ベッカー
さま)の出現によって、激動のハンガリー現代史の如く一寸先も読めない
変転を迎えるのでありました………。









(以下、内容に大幅に触れております)
















この映画を一語で言い表すのは難しいのです。最初は(憂)とか(蒼)に
しましょうか?とも考えたのですが………結果的には(毒)になりました。
(蒼)ですねぇ………前半には、さり気なく………しかし画面の随所に必ず
出てくるのが青系統の色なんです。

ミューズたるイローナのドレス、アラディの部屋に散乱している本の装丁。
アラディが書き記した楽譜には青インキで♪が記されておりました。
どんよりと流れるドナウ河、その河を挟んでブタとペストと言う二つの都市
を結ぶ橋。そして鷲を象ったブロンズ像。そしてアラディとイローナが出会
った時に手に抱えた花束。究極とも言えるのが七宝細工の藍色の髪飾りで
しょう………。

ピカソには「青の時代」と言う青年期の創作期がありましたが、青は心理的
には陰鬱とか………或いは癒し的な効果をもたらす色とされております。

一応主体を為すのは………イローナを巡る男二人、アラディとラズロの関係
なのですが、どうしても、もう一人の主役ハンス・ヴィークの存在を忘れる
訳には行かないんですね。実を言えば、一番自分に近いキャラクターだなぁ
と強く感じたのでした………。

彼は多くの男性客同様イローナを一目見て、彼女に一目惚れ。ですが………
真面目だけが取り柄の彼には、”限度”をどうやって付けるのかを判ろうと
はして居なかったなんですねぇ。判っていたかも知れないですが、対処の
方法を知らなかった。でもねぇ………最初の方の彼は、タイプでは無いし、
少々疲れるところもあるんですが、基本的には”純朴”なんです。
ところが………こうしたタイプは、一度信じてしまうと突っ走ってしまうん
で、親衛隊に身を投じることになり、実務家なんで出世街道まっしぐら♪

ただ………ここがこの映画並びに、キャラクター作りの秀逸なところでして
決して「狂信的」では無いんです。ある程度自分の立場と親方日の丸為らぬ
双頭の鷲と鉤十字の行方も段々と判ってくるんですね。そこで義理と人情
秤に掛けて、背中で泣くよ唐獅子牡丹♪
そうなんです………ゲルマン男子ベッカーの背中に刻み込まれた唐獅子牡丹
の行方は如何に………????????(^^;;






(映画を観ていない方は、絶対に読んではイケマセン)

 













結論からいえば、義理と人情ではなくて、彼が取った方策は「欲」だった
のですねぇ………「偽善」と書こうとしたけれども、確かに板子一枚踏み
外せばアウシュビッツか?東部戦線送りになりシベリアの凍土の一部になる
危険大なんです。だから、ベッカーが金子を巻き上げて「命のビザ」を発給
したのは、自分だってやりますね。これは責められないです。
つまり………ちょっとした善行を施すことによって、自分が行っていた
或いは見過ごしている巨悪を誤魔化す………。彼の弱さが滲み出ています。
但し、一つだけ我慢ならないのは………イローナと権限を使って寝る(これ
は、まあ判らないでも無いです。でも………萌えないだろうなぁ(^^ゞ)
寝たから………ラズロを救出するか?と思わせておきながら、結果的には
数学者を助ける………。ここでラズロが移送される列車の中で笑みを浮か
べるのですが、ベッカーを許していたのか?
恐らくは………「歌のメッセージ」通り、「もう良いよ………これで解放
されるんだね」と言う諦念だったのかも知れません。

そして………結末に用意された驚くべき二つの「毒」!!!!!!!!!
映画を観続けていて………大概のパターンは読めるのですが、これは流石
に参りました。\(^0^)/\(^0^)/\(^0^)/

完敗です!

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2002年5月30日 日比谷シネシャンテ3にて鑑賞)

BGM:OST:『暗い日曜日』より〜ヘザー・ノヴァ歌唱『Gloomy Sunday』

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