(緊)『グランド・コントロール〜乱気流』

98年に観た中でも「面白さ」から言えば、優に5本の指に入る傑作でした。
僕にとってみれば、あの『エグゼクティヴ・ディジション』と比肩すべき
出来です。

映画館の方も、銀座の三原橋地下にあるシネパトスなのですが、普通
であれば地下鉄の音が気になってしまうのだけれども、今回に限っては
非常に良い意味で「効果音」として機能しているのが素晴らしい。(笑)

タイトルからして、去年公開された『タービュランス 乱気流』の続編か
姉妹編かと思いきやまるで違いますし、出来としては此方の方が遥かに
上を行っております。

大晦日の夜、フェニックス空港は大混乱を極めていた。と言うのも、
通常運行以外に50機の増便を抱え込んで、しかも産休や欠勤者が
続出。現場責任者であるTCは、かつて優秀な管制官であったジャック
(キーファー・サザーランド)に白羽の矢を立てる。
しかし、彼には深いトラウマが有り、数年前引退しゲーム・デザイナー
に転向していた。一日だけならと軽い気持ちで引き受けたジャックで
あったが、フェニックス空港に未曾有の災難が降りかかろうとしてい
た………。

まず、素晴らしいのは、キャラクターが全員立っていると言う点。自分に
は非が無いのに、墜落事故の責任を感じて、現在は航空ゲーム・デザ
イナーをしているジャックを初めとして、野心家の若き管制官クルーズ
(ロバート・ショーン・レナード)、配属されたばかりのジュリー(クリスティ・
スワンソン)、キャリア志向のチーフ、スーザン(ケリー・マクギリス)、
30を超え、迫るストレスと圧迫の為に身も心もボロボロになっている
ランデイ(チャールズ・フレッチャー)、そしてジャックの真の理解者であ
るT・C(ブルース・マクギル)。

これらの数多くのキャラクターが見事に描きわけられております。それが
状況が刻々と変化していくに従い、そのキャラクターの違った一面が
出てきて、更にそれが輝いて見えると言う点。これは並みの力量では
できません。登場人物の過去迄キチンと知り尽くした上で、皆様役作り
をしていらっしゃるのが十二分に判るのです。

さらにこの作品を推薦する大きな理由の一つは、僕の職業的理由も
絡んでくるのですが、「巨大システム」が故障した時に、現場は如何に
して判断を下すか。そのプロセスが実にキメ細やかに描かれております。

新人のジュリーがパニックに陥った時に、ジャックはこうアドヴァイスする
のです。

「このディスプレイは二次元だが、実際は三次元なんだ。先を読んで冷
静に判断すれば慌てないで済む」

実に肯けるセリフです。本当に丹念に取材をした結果が如実に出てお
り感動してしまいました。

最後の一仕事をしたときに、仕事場で酒を飲むシーンも身につまされ
ましたし(ただ、映像的な理由であるが、オペレーション・ルームで酒
を飲むのは絶対に有り得ないし、第一、液体の物を持ち込まない。
映像として判っていてやったのでしょうけれども。控え室で飲んでいたら
冴えないしね。(^^ゞ)

おまけに、CEの方の裏方の苦労までもがしっかりと描き込まれており、
こんな事も有ったよなぁ………とシミジミとしてしまいました。

この監督、リチャード・ハワードはこれが初監督作品だそうですが、実に
手堅い演出ぶりで今後の大有望株です。第二のジョン・バダムになりそう
な予感すら致します。

キーファー・サザーランド様が、監督を推薦したそうですが、実に見る目
が確かでしょう。それに、キーファー・サザーランドの今迄演じてきた役
柄の中でも、『危険な遊戯 ハマースミスの6日間』と並ぶ彼のベスト演技
でしょう。

大変地味目な公開ですが、パニック映画ファンの方であれば、観て絶対
に損はありません。強く推薦させて頂きます。

「パニック映画友の会」 大倉 里司(HCD05016@nifty-serve.or.jp)

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