(闇)『グリーン・マイル』

スティーヴン・キングの原作は未読な為、比較が出来ないのが残念ですが、非常
に良く出来た映画だと思います。ただ、文句無しの名作である『ショーシャンク
の空に』と監督、脚本、原作者とダブる為、あの感動よ、もう一度と期待すると
外されるだろうなぁ……と感じたのが正直なところ。最初に否定的な意見を読ん
でおいて良かったと思うのです。

近未来(?)の養老院で、歳を重ねてゆくポール・エッジコムは静かに余生を送
っていた。だが……養老院のTVに『トップハット』が映し出されたことから、
彼の回想がはじまる……。

時は、1930年代の大恐慌時代……アメリカ南部と思わしき地方の刑務所で
看守主任を務めていたポール・エッジコム(トム・ハンクス様)は、持病を抱
える身であった……持病と言うのは、排尿をする時に激痛が襲うものでありま
した。彼と共に囚人の監視をする同僚は、大男のナイスガイ、ブルータル(デビ
ッド・モース様)、まだまだひよっ子的な感じがするディーン(バリー・ペッパ
ー様)、如何にもベテランと言う感じのハリー(ジェフリー・デマン様)そして、
コネで刑務所の看守になった鼻つまみ者のパーシー(ダグ・ハッチソン様)で構
成されていた………。ここが普通の刑務所と違うところは、「死刑囚」を収監す
る場所であったことだった。ある日、ジョン・コーフィー(マイケル・クラーク
・ダンカン様)と言う黒人の大男が収監される……。彼の容疑は少女二人を強姦
の上殺害したということ……だが、ポールをはじめ、殆どの看守は罪状と本人と
の違いに戸惑うばかり。そして、コーフィは、常人には無い不思議な力を持って
いた………それは、人の病気を治癒する能力が備わっていたことだった。
ポールは、自分の持病を治癒して貰ったことを契機に、コーフィが無罪では無い
のか?と疑問を持ちはじめるのだが……。

賛否両論別れる映画だと思うんですよ……と、言うのは「治癒」を行う能力を
コーフィが持っていたことで、「善人」の他に「聖人」としての側面を与えて
しまったからなんですね。事実、これはイエスの処刑を背景にしている節がある
のですが……この他にもう一つのテーマがある気がするんです。

オープニングで、荒れ地を捜索している農民の群れを映し出すのですが、この時
の色合いが、アンドリュー・ワイエスの絵を思わせるような色調なんですよ。
そして、農民が持っているのは猟銃の他に、鋤なんですね……で、閃いたのが
「アメリカン・ゴシック」の世界。作者は忘れましたが、確か現物はシカゴ美術
館にある絵なんです。つまり……何と言うかなぁ。アメリカの陰画とでも言いま
しょうか……「闇」の部分を照射しているのですよ。

それから考えると、時代は「大恐慌」ですし、コーフィの官選弁護人を務めた
ハマースミス(ゲイリー・シニーズ様)も、根っからの人種差別主義者のみなら
ず息子の心痛も考えられない父親なんですね……「映画」が『トップハット』と
言う「光」の側面を出していて、しかもミュージカルと言う形態がアメリカ産の
もの。ここで面白いのが、「聖人」としての役割を果たすのが、南部出身の黒人
と言う皮肉……同じく収監されているデル・ドラクロア(マイケル・ジェッター様)
は、南部に多かった仏蘭西からの移民の転落者。そして最初に処刑されるアーレン
・ビターバック(グラハム・グリーン様)は、何とネィティヴ・アメリカンの酋長
だった……そう……これは、現代アメリカ史の陰画なんです。

感動を求めるのも良いのだけれども、僕的には非常にそうした視点で観ると面白
く観れました。

映画的に言うのならば、殊に二人目の処刑シーンが後味が悪いと悪評紛々なので
すが(笑)自分としては、「バケツ」のシーンからして、スティーヴン・キング
の出世作と為った『キャリー』へのオマージュだと感じました。それが故に、こ
のシーンは非常に長いのです。つまり……出口に向かって殺到する場面を天井から
映す為にはこの位の長さが必要だった……と、ぼくはそう捉えております。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年3月31日 新宿スカラ座にて鑑賞)

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