(和)『ハーモニー』

皆様、御機嫌如何でせうか?わたくし、マダム・DEEPと申します。

先日、豪州映画の『ハーモニー』を観て参りましたので、その感想を書
かせて頂きます。

非常に良く頑張つてゐる映画だとは存じますが、映画全体の質から申しまして
『世にも憂鬱なハムレットたち』に遠く及ばずと言ったところで御座ひませう。

何より不満がありましたのが、舞台が精神病院であつたと言うことでせふ。
それぞれの役者が、それぞれ異なる病気を持っているのはわかりますが、
それが故に、キャラクターの描き分けが上手く行つてゐなひやふに感じま
したの。主役のルイス(ベン・メンデルスゾーン)様を引き立てる為だつ
たのかも知れませんが、他の方々のエピソードは一つだけと言ふもの寂しひ
気が致します。『世にも・・・』の方が、『ハムレット』と言ふ一つの劇を
取り巻く、色々な解釈があり、その役に賭ける役者魂と、その人の人生の
舞台裏が描き出されて本当に堪能できましたもの。

あと、もう一つは、『コシ・ファン・トゥッテ』の使い方ですわね。
これもまた、この映画から「華」を奪つておりますわ。
舞台が舞台なだけに、全員伊太利亜語で歌唱が出来たらそれは変ですし、
BGMとして、この歌劇を使うのは上手ひアイディアだと思いますわよ。
それに、ルイス様が、CDを聴きながら、独り悦に入ると言ふ描写も描
かれてゐて好感を持てましたの。

ただ、ジュリー(トニ・コレット)様を引き立てるために、『コシ・ファン・
トゥッテ』を中断してまで、『スタンド・バイ・ミー』を歌わせるのはどふ
かと思ひますのよ。
彼女が華があつて、アカペラであれだけの歌唱力が有るのは流石だと思ひ
ますわ、でも、彼女を引き立たせるための手段であれば他のエピソードを
挿入すれば十分だつたやふに考へます。

わたくしは、残念ながら、『コシ・ファン・トゥッテ』の舞台は直に見て
ゐなひのでせふが、この映画を観る前に全曲のCDを聴きました。

オペラの魅力を引き出してくれる映画だと思っておりましたのですが、
残つたのは不全感だけでしたわ。(涙)

この脚本を書ひたのは、『心の地図』を御書きになつた、ルイス・ノーラ
先生でふが、この脚本は「舞台」ならではの面白さであつて、「映画」
としての面白さでは無ひのです。その意味で非常に勿体無ひ映画です。

『世にも・・・』も「舞台」向けの話とは言へますが、それでも「映画」
としての愉悦を十二分に堪能させて頂いた作品でしたもの。

『裏社交界の徒花』 マダム・DEEP(HCD05016@nifty-serve.or.jp)

BGM:W・A・モーツァルト作 歌劇『コシ・ファン・トゥッテ』
レヴァイン指揮・ウィーン・フィル・ハーモニー演奏盤

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