(暁)『ホールド・バック・ザ・ナイト』

草月ホールで開催されている、ケルティック・フィルム・フェスにて4本の長編
映画を観ただけですが、これが一番ケルトっぽい感じが致します。と、言うのは
スコットランドの田舎町を延々と走って、目的地がスコットランド最北のオーク
ニー諸島のストーン・サークルを目指して旅するロードムービーだからなのです。

シャーリーン(クリステーン・トレマルコ御嬢様)は、父マイケル(リチャード
・プラット様)と精神薄弱の妹と3人で暮らしておりました……ですが、ある夜、
妹の部屋でピルを発見したシャーリーンは、父が未だ妹に対して性的虐待を加え
ていた事実を知り、身一つで家を飛び出す。目指す先は、エジンバラに住んでい
る伯父であるボブの家。ヒッチハイクを続けている時、道路建設反対運動をして
いたヒッピー紛いの青年デクラン(スチュワート・シンクレア・ブリス様)と知
り合い、一夜を共にする……皮肉にも次の朝、反対派一掃の為に駆けつけた警官
に、シャーリーンが暴力を振るったことにより二人と犬は追われる立場に……。
逃げ場を求めて一台のヴァンに隠れるが……その車の持ち主は非常に上品な老婦
人ヴェラ(シーラ・ハンコック様)だった。エジンバラは目的地に向かう途中と
言うことで3人+1匹の奇妙で切ない旅路がはじまろうとしていた……

カンヌ映画祭批評家週間に出品され、観客賞を受賞した作品ですが、それが素直
に肯ける佳作です。

性的虐待とか……精神薄弱の妹とか……テーマを構成する一つ一つの要素は石の
様に重たいのですが、ラストに近づいてくるに従って、映画の目的地であるスト
ーン・サークルの様に奇麗な纏まりと昇華を見せてくれる「ちょっと良い映画」
なんですね。映像も美麗ですが……特筆すべきは、この3人のキャラクターが
しっかりとしていて実に安心して見ていられると言う点があります。

クリスティーン・トレマルコ御嬢様は、アントニア・バード監督の『司祭』でも、
父親に性的虐待を受ける少女を巧みに演じていましたが、今回もギリギリのとこ
ろで踏みとどまると言う難役をこなし、第二のジェニファー・ジェイソン・リー
様の予感すら致します。そして、新星のスチュワート・シンクレア・ルイス様は、
本当にこれからの有力株。目に光が宿っており、かなりの美形。青田買いの方は
早めにどうぞ……そして、シーラ・ハンコック様演じた老婦人ヴェラによって見
事に纏まっているんですよ。細かい性格設定なり、エピソードを書いてしまうと
ネタ明かしになってしまうので書けないのが残念ですが、彼女抜きでは、この映
画の魅力が半減したことが疑いようが無い位の好演です。

最後の最後で急速に話が集結してしまうのが惜しい気もしますが……今回観た時に、
「UIP」のマークが表示されたので、日本でも公開される見通しと為りました。
テアトル西友あたりでじっくりと掛けてくれると丁度良い感じに為る気が致します。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(2000年4月6日 ケルティック・フィルム・フェス 草月ホールにて鑑賞)

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