(情)『地獄』

中川信夫監督の『地獄』を遂に鑑賞できました。(感涙)

今から40年前の新東宝製作の映画ですが………今の時点で観ると………?的
なところもありますが、逆に「おおおっ!」と唸らせるシーンも多数。巨匠と
呼ばれただけのことはあるんですね。

将来を嘱望された大学生清水(天知茂様)は、悪魔のような友人田村(沼田曜一
様)の運転する車で、ヤクザを轢き殺してしまう。誰も目撃者は居ないとの田村
の教唆で現場を逃げ去る二人………だが、誰も居ないと思っていたのだが………
被害者の母が目撃しており、法に依らない処罰を目論んでいた。

「法の眼」は潜り抜けられても、「心の眼」からは逃れられないことを悟り、
清水は、婚約者の幸子(三ツ矢歌子様)と共に警察に行く決意をする。

が………しかし、警察へ自首する矢先、乗っていたタクシーが事故を起こし、
幸子が死んでしまう。清水の苦悩は増すばかり………その矢先、父より「ハハ、
キトク」の電報を受け取り、実家へと戻るのですが………。

ちょっと描写が唐突なところもありますが、それを含ませても非常に良く出来
た脚本では?と思うのですね。

悪魔の様な友人沼田が、清水の実家で登場人物全ての悪行を暴いていくところは、
クリスティの『そして誰もいなくなった』を思わせるところがあります。

それと同時に、「悪」を犯していない人間等居ず、それが故に罪深く業に塗れた
存在であることを示しているのですが………この場面を含めて全編を被いつくし
ているのは「弱き人間に対しての視線の優しさ」なんですね。

それも、ベタベタに甘い訳では無く「罪」の部分をしっかりと凝視した上で描く
のですから、説得力が出て参ります。

清水の教授は戦争中、水を求める戦友を押しのけて水を得………生命を長らえ
た………この事について何も責めては居ないのですよ。ただ、一枚の写真を見
せて事実を語り、生き延びたとしても別の意味での「地獄」が待っていたこと
を映し出すのです。

この映画が製作されたのは、1960年………当時の人が観ていて、果たして
癒されたのか?または思い起こして苦しんだのか………。

真実はそれぞれの魂の中にあり………

………死後それぞれの魂によって己が裁かれるのでしょうか………

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(10月31日 第15回東京ファンタスティック映画祭にて鑑賞)

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