(律)『カドッシュ』

イスラエルと言えば、世界3大宗教の内の一つ基督教の発祥地であり、基督教、
回教の母体となったユダヤ教の本拠地と言うかやはり発祥地か………。

そうした世界の宗教と紛争のメッカ(^^ゞとも言うべき、エルサレムを舞台にし
たアモス・ギタイ監督の最新作が、この『カドッシュ』カドッシュとはヘブライ
語で「神聖な」と言う意味らしく、この映画の中では痛烈な「毒」を持って批判
している「戒律」を指しております。

ユダヤ教と言えば、「モーセ五書」即ち「トーラ(律法)が第一の掟。
これ、すなわち神=創造主との契約。破った人間は、神様のお怒りに触れて塩柱
にされてしまうのは昔の話………と思いきや、現代にも「律法」は生きていたと
いうのがこのテーマ。

儒教もそうなのですが、ユダヤ教=基督教=回教においては、あくまで「父親の
神」が基本なので、「女」の役割は子育てをして、子孫繁栄の為に息子を産み、
息子は律法を学ぶ為に存在する……
そうした掟の為に二人の姉妹、リブカとマルカは悲劇の運命を辿らなくては為ら
ない……韓国映画では李朝女人残酷絵巻として散々製作されてきたのですが……
イスラエルでもそうだったのね………と、憂鬱になることしばし。

姉のリブカは、熱心ではあるが狂信的では無いユダヤ教徒の信者の夫と子供は居
なかったものの、相思相愛の日々を送っておりました。片や妹のマルカの方はと
言えば、恋人が居るにも係わらず、地元のラビの弟子と愛の無い結婚を強制され
ることに………。
そして、平穏に見えた姉のリブカも10年間子供が出来ないことを理由に夫の意
思とは無関係に半ば強制的に離縁を申し渡される。

この映画では、ユダヤ教=基督教の根元が、非常に男性にとってのみ都合の良い
規範となっていることを鋭く批判しておりますが、テーマが先行してしまってい
て、「娯楽作品」としては固すぎるという念を持ちました。

聖林の『黙秘』を出すまでも無く、韓国映画の『避幕』と言う映画では、ホラー
と言う形式を借りながらも儒教の持つ最大の害「女性蔑視」を鮮やかに批判する
ことに成功しておりますが………今回は、そこまで至っていないのが残念。

「持戒は驢となり破戒は人となる」(一休宗純)

これですが………戒律ばかりに汲々としているものは、来生において転生すると
きはロバになって生まれ代わり、戒律を破って生きるものは人となって転生する
と言う意味です。

宗教においても、出来た当初は正しくとも時代の変化により、従来の戒律だけで
は限度がありますし、無理に押し込めようとすれば悲劇が生まれる要因とも為り
ます。

一番大切なのは………戒律を鵜呑みにするのでは無く、その精神を生かすことだ
とぼくは考えております。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
(第12回東京国際映画祭シネマプリズムにて鑑賞)

BGM:ミッシェル・ンデゲオチェロ『The Way』

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