(銭)『ラン・フォー・マネー』

「地獄の沙汰も金次第」、「金の切れ目が縁の切れ目」とか「猫に小判」とか
(流石に、これは意味が違うような……(^^ゞ)
「金」と「女」は犯罪映画の二大テーマ……昔から数多くの映画の題材になっ
ておりますが、この『ラン・フォー・マネー』はちょっと違った視点から描い
た「棚からぼた餅」式の喜悲劇なんです。

西洋と東洋の接点の街……イスタンブール。この裏町でセリム(タネル・ビル
セム様)は、紳士用品店を営んでおりました。実直なことでは周囲の評判も厚
いセリムには、妻と子供がおりましたが……彼の人生は一晩でガラリと変わっ
てしまうのでした………。ある夜、タクシーに乗ろうと、次の客が降りるか降
りないか?の内に車に乗り込んだセリムは……一つの鞄を発見……そこには大
枚43万ドルが!正直者のセリムは、タクシーから降りて……その金を持ち主
に返そうとタクシーをひき返えさせたのですが……既にその客は居なかった。
次の日、セリムは新聞の社会面を見て愕然!何とその金は銀行員が横領した金
だったのです。

札ビラがハラハラと宙から舞い降りる……そしてカットバックで出演者・タイ
トル等が交錯する……冒頭から凄まじいテンションなんですわぁ……。映画の
クレジットタイトルが全部表示されるまでの冒頭で、映画の出来は、あらかた
決まると言う持論の僕にとっては嬉しい切り出し♪♪♪♪♪

『シャロウ・グレイヴ』のサントラを掛けながら書き続けますよん♪♪♪♪
冒頭のカッコ良さに関しては、『キャラクター〜孤独な人の肖像』、『マルサ
の女』、『恋する惑星』そして、今、曲を聞いている『シャロウ・グレイヴ』
あたりがパッと思い付くけれども……これは、嬉しい仕掛けをもう一つ用意
してあるんです。

冒頭から……「金」、「金」、「金」、「金」、「金」、「金」、「金」の台
詞のオンパレード!本編に入ると子供が砂遊びをしているところで、見つけた
100ドル紙幣……正直者のセリムは持ち主に返そうとするんですが、奥様方
に反対され……そして、43万ドルを掴んだのは良いけれども、警察には届け
られず……奥方にも誰にも言えず悶々とする日々……そりゃぁ、そうでしょう。

ただ……この映画は、『シンプル・プラン』の様に「悲劇」としては描いてい
ないんですね。彼自身はその金を巡って殺人事件を起した訳では無いから……。
但し、これが凄いところなんですが、彼の廻りではありとあらゆる「財産犯罪」
がごく自然に巻き起こるんです。(笑)

ネタを明かさないように軽く書くと……銀行員が犯した罪は「業務上横領罪」
セリムが犯した罪は「遺失物横領罪」これは落し物を警察に届けないでネコバ
バしてしまった場合です。そして……店員を解雇したときに強盗に襲われるん
ですが、これは「強盗罪」……この中では一番罪が重い。そして「詐欺罪」
(これは成立が難しいですねぇ)あとは……「脱税罪」ですねぇ……どんな事
由にしても所得があれば課税されます。例え犯罪で得た金と言えども申告ナシ
は同罪。(笑)無いものは「窃盗罪」と「背任罪」位なものか。これらが全て物
語の中で矛盾無く進んでいくから凄いんですわぁ……

そして……事態は、当然と言えば当然……意外と言えば意外な終わり方をする
んですが……此処では触れられないのが残念。全編を貫いたイスタンブールの
日常的な中の非日常的な風景も物語のアクセントとして効果的に使われています。
これは非常に面白かった一本でした。

「裁判映画友の会」広報担当 大倉 里司
(2000年10月30日 東京国際映画祭 コンペティションにて鑑賞 渋谷ジョイシネマ)

BGM:OST:『シャロウ・グレイヴ』

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