(戦)『KT』

1973年8月8日、金大中・元韓国大統領候補が、九段ホテル・グランド・
パレスから突然姿を消す……5日後、ソウル市内の自宅前で目隠し・傷だ
らけの姿で発見された。当時、彼の消息を巡って日本と韓国そして米国
までをも巻き込んだ国家間の緊張は極限まで高まった。拉致・暗殺指令を
受けた諜報部員たちはなぜ彼を殺さなかったのか?計画に関わったとされ
る日本人が“空白の5日間”に取った行動とは?「政治的妥協」という形
で真相究明の道を閉ざされた事件の背後には、一体どんな「真実」が隠さ
れていたというのか…?

上記部分プレス資料からの丸写しです(^^;;
と………言うか、公式見解としては上記部分なんですよん。歴史の「闇」
に消えた部分を如何に想像力と小さい事実で埋めていくかが腕の見せ所
なんですが、この作品実に良く出来ているんです。

まず、主題となるのは金大中(当時)大韓民国大統領候補拉致事件なんで
すが、後に本部長が朴大統領を暗殺してしまうKCIAが実行に移し、
それを自衛隊陸上幕僚監部二部が黙認すると言う形態を取った形になって
おります。しかし、「反体制」を掲げる金大中サイドも身の危険を常に
感じている訳でして、支援団体の民団東京本部とジャーナリストとの
支援………そして韓国大使館内の内通者等の壮絶なる諜報戦が一番の見所。

今回は個人名を敢えて伏せているんですよん。何故かと言いますと登場
人物が兎に角多い上に錯綜しているんです。そうした訳で下手に書くと
余計に判らなくなってしまうのを怖れた次第。m(__)m

ところが………意外にも映画を観ている分には、錯綜はしているのですが
要所、要所にキャラが立っていて、実に良く整理されているんです。

それと同時に浮かび上がってくるのは、日韓の歪んだ絆でして………(涙)
まず主役の一人、自衛隊陸上幕僚監部二部[陸幕二部]所属の富田満州男
(佐藤浩市さま(*^^*)ポッ)は、韓国で民主化運動に携わり拷問を受けた経験
を持つ李・政美(ヤン・ウニョン御嬢様)と出会い淡い恋仲になる………。

一方のKCIA局員で表向きは韓国大使館一等書記官・金車雲(キム・ガプ
スさま)は、日本名は「佐藤」で通している。

そして………韓日問題で外せないのは「在日」の問題でして、自分の生まれ
育った仙台では「部落問題」は全然無かったので、ピンと来なかったのです
が、流石に「在日」の方々への心無い偏見は耳にしておりました。(--;)

筒井道隆さま演じた金甲寿と言う若者なんですが、在日二世なんです。
母親は理髪店を女手一つで切り盛りし「アンタが肌の黒いのと付き合おう
が目が青いのと付き合おうが自由だけど、日本人とだけは付き合ったら許
さないからね」と釘を刺されてはいるものの………その事を隠して日本人
女性と交際を続けている。映画館の中で不良高校生に絡まれて、恋人は
事の真相を知るのですが、最初は戸惑うものの全てを捨てて彼の元へ身を
寄せる覚悟を決める………

金大中大統領候補のボディガードを務める傍ら、聞き慣れないハングルの
演説を聞いている内に、意味が判らないまま熱意に打たれて拍手をする場面
は殊に素晴らしいです。

ところが………拉致が発覚して公安取調べ官から、「朝鮮人の癖に朝鮮語
も判らないとはな」と罵倒され、泣き崩れる場面は痛かった………。

どちらにも属せない「絶対的な何か」を全て壊されてしまった存在が、
夕刊紙の記者・押川昭和(原田芳雄さま)なんですねぇ。元々特攻隊の生き
残りで、戦後は共産主義に染まろうかとしてはみたものの………。
しぶとく”生きる”ことだけが、他には替えられない価値観だと身を持っ
て示してくれている気がするんですよ。

歴史の闇で蠢きドブの底で這いずり廻りながら、「何か」を成し遂げよう
とした男と女の哀歌がここに記されております。

初代「大河浪漫を愛する会」大倉 里司

(2002年5月13日 シネマスクエアとうきゅうにて鑑賞)

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