(愛)『河童のクゥと夏休み』

夏休み前のある日、ひょんな事から康一は学校の帰り道
で大きな石を見つけた。石を持ち帰り水で洗うと、中か
らなんと河童の子供が!人間の言葉を話し、何百年も地
中に閉じこめられていた河童を、康一は鳴き声から「クゥ」
と命名。最初は驚いた両親や妹もクゥを受け入れ、家族
だけの秘密にして一緒に暮らし始める。だがそんなある日、
クゥが突然「仲間のところへ帰る」と言いだす。康一は
クゥを連れ、河童伝説の残る岩手県・遠野へ向かうが……。

『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』
から5年を経て「あの男」が戻って参りました。原恵一監督
です。彼が脚本も担当した本作。子供用アニメーションと
しては、138分と言う大長尺が唯一の欠点となる他は、
全て完璧な出来栄え。いや……そんな言葉でこの映画を表
したくありません。300年の時を経て未だに胸に生き続
ける親子の切っても切れない絆。時代が変わっても変わら
ない人間と言う生き物の理不尽さと傲慢。そんな世界の中
でも「異形の民」となったクゥを庇う上原家の家族愛。
そしてその上原家に飼われているオッサンと言う名前の犬
が抱える余りに哀しすぎる過去……。

もう此処まで並べられたら、今年のベスト1にするしかあ
りませんでは無いですか。

人によって感じ方、泣きのツボは異なるでしょうが、自分
としてはクゥが康一の父、保雄の勤める会社の取引先の圧
力にて半分強制的にテレビ出演させられるところから、身
を引き裂かれるような強い哀しみと怒り、そしてその事を
察したオッサンによる逃亡劇……そして、東京タワーに上
って……と言う一連の流れでは、ティッシュペーパーが
何個あっても足りぬ程の涙と鼻水。体中の水分が一挙に排
出される位号泣させて頂きました。

他にも、クラスの中で苛められながらも、一人健気に生き
ている菊池と言う少女と康一との関係の変化。
誰一人頼れるものが居ない事を自覚しているが故に、上原
家の家族以上にクゥの心情を誰よりも理解している彼女の
キャラクターと、康一がクゥを巡って孤立していく過程で
かつては康一も苛めに加わっていた彼女の心の痛みを知る
と言う描写が嫌味無く織り込まれ、この作品に一層の深み
を与えております。

この夏公開される作品の中で、天才的な料理の腕を持つ鼠
を描いた『レミーのおいしいレストラン』では、最終的に
は鼠と人間との共生が描かれておりますが、本作品では、
人間世界と決別の道を選択するのですね。それがこの夏休
み映画の最大の違いと申せましょう。

両作品共に非常に高いクォリティを保っておりますが、個人
的に推したいのは本作です。観る機会があれば是非御覧
頂ける事を願って止みません。

初代「大河浪漫を愛する会」
自称「カルト部屋御挨拶係」大倉 里司
(2007年7月28日アミューズCQNにて鑑賞)

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