(懐)『クリクリのいた夏』

良くフランス映画のことを形容するときに「御洒落で小粋な〜」と言う表現を
使いますが、この『クリクリのいた夏』は、小粋かもしれないですが、決して
「御洒落」な映画では無いんですね。コテコテの淡水系人情噺……(笑)

物語は在って無きが如く……と言うか、観ていて余りにも「時の流れ」が自然
体であるので、ホント……時間の経つのを忘れます。
1930年台初頭のフランスの片田舎の沼地。第一次世界大戦から帰還した流
れ者のガリス(ジャック・ガンブラン様(*^_^*)(ポッ))は、此処に住み着い
て早12年……隣人には奥方に逃げられ、未だにそれを引き摺っているリトン
(ジャック・ウィユレ様)と現奥方……そして、末っ子のクリクリ(マルレー
ル・バフィエ御嬢様)が居られました。頼りないリトンの為に、ガリスはあれ
これと気を揉むのですが、そろそろ、ガリスはここを離れたいと言うのが本音。
一方リトンも自分が、ガリスのお荷物であることを十分に知っている…(涙)

そうした沼地での生活と言えば、スズランを摘んだり、夜唄を歌ったり……
と日銭を稼いでいる二人でしたが、そうした環境に憧れを持つ、インテリの
中年男アメデ(アンドレ・デュソリエ様)の協力もあって、奇妙な二人三脚は
恙無く進んでおりました。

ある日、ガリスが町でスズランを売っていると……ボクシングのチャンピオン
ジョー・サルディ(エリック・カントナ様(*^_^*)(ポッ))が現れる。ガリス
はスズランを売っていたが、同じ時間に酒場で、蒸発してしまったパメラのこ
とを思い泥酔しているリトン。リトンはジョーの彼女をパメラだと思い込み、
絡み始める。激怒したジョーは店で暴れ……逮捕されてしまう。やがて、これ
が大いなる喜悲劇の幕開けとなるのでした………。

これ以外にも沢山の人間が出てくるのですが、キャラクター設定は完璧で誰
一人無駄な人間が居ないし、全員が全員「過去」を持っている<ココ重要!

話のほうは進めなくても、只管に……観ながら時が止まれば良いのに…と熱望
するほどに至福の時間が過ぎてゆきます。過去は過去として遺しておきたいも
のですが……何でしょうか?辛い過去もあるけど……同時に美しい過去もある
んですね。それが如実に出てくるのは、一大実業家で、町一番の名士ペペ(ミ
ッシェル・セロー様)が沼地を訪ねてくる場面に良く出ています。

彼は昔、一文無しの時点でこの沼地に住んでいて、今は亡き奥方と共に荷台を
背負ってここまでの財を築いてきた……今は成功して、引退。婿養子をも迎え
傍から見たら何不自由無い身分ですが……彼の心の中には若く希望に溢れて
いた沼地の「原光景」が広がっていたんです……(落涙)ですが……今と為っ
ては戻れない「違う人種」としての根があるんですね。娘なんかは、この沼地
時代のことをひた隠しに隠したい訳なのです。それに、たまに戻るから良いの
であって戻れば戻ったで違う苦労がある……とこの映画では、その「負」の部
分迄随所に織り込んだ上で、「過去は美しい真実」とラストをも含め言い切っ
てしまうから、判っているけど……貰い泣きなんです。

去年、今年に観た映画の中では『フェアリー・ティル』に次いで、素直に「良い!」
と断言出来てしまう文句無しの大傑作!

マダム・DEEPと共に連名で推薦致します。

「大河浪漫を愛する会」大倉 里司
「裏社交界の徒花」 マダム・DEEP
(2000年7月12日 文化村ル・シネマにて観賞)

「か」行で、はじまる映画の感想に戻る

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送