(謎)『ロスト・ハイウェイ』

『ロスト・ハイウェイ』を昨日観て参りました。

実を言えば、この作品を観るまでは、僕は大の「リンチ嫌い」だったのです。
「リンチ嫌い」と言うよりも、『ブルー・ベルベット』を何故、過大評価す
るのか?マシュー・チャップマンの『ハート・オブ・ミッドナイト』の方が
数倍凄いぞ!!!!
と意気込んでおりまして、御大リンチ様には、個人的に何の恨みも持ってい
なかったのですが、それを煽る「○野雄二」と言う奴の態度が許せなかった
だけの話しです。m(__)m

今回の『ロスト・ハイウェイ』を観ていて、驚きました。自分が認めなくな
かった部分を認めざるを得ません。

結論から言ってしまうと、リンチ御大は、わざと、話しの展開を分からなくし、
ストーリー・テーリングを無視した「確信犯」だと言うこと。(^^)

「無視」と言うより、観る人の神経を逆撫でしていると言った表現の方が妥当
かもしれません。

この映画を観た後、僕はこの映画を薦めてくれた、新宿「裏社交界」のとある
酒場の姐さんに『ロスト・ハイウェイ』の感想を話したところ彼女はこう話し
てくれました。

「だからさあ、リンチって。ここで黙って飲んで居て、私たちが勝手な解釈
をしているのを聞きながら、心の中で笑っている人だよ。”君たちはそう考
えた訳だね”」と。


これを聞いて、我が意を得たりと思ったわけですよ。本当に。

この『ロスト・ハイウェイ』は傑作です。

何故、傑作かと言えば。

1.こんなに訳の分からない、理由がつかない脚本にも係わらず、ビル・プル
マン、ロバート・ロッジア、パトリシア・アークエットの魅力を100%以上
引き出していること。

ビル・プルマンですが、今迄存在感の薄い、「良いヤンキーのお兄ちゃん」
的なイメージしか無かったのです。
『冷たい月を抱く女』でそのイメージを逆手に取って、驚かせてもくれまし
たが、今回のオープニングで示される、あの表情。
それに、最初のベッドシーンがありますよね。その際に普通の監督だったら、
彼の腕の毛を剃らせています。
しかし、リンチはそれをせずに、敢えて毛が生えたままの手を、妻の胸に
当てることにより「濃厚な色」を醸し出すことに成功しています。
本当に観ながら「感じてしまいました」(^^;;

パトリシア・アークエットのケバさもまた一興です。
黒ずくめのドレスを着て、黒いマニュキュアをした「人妻」が、郊外にある
住宅地で玄関を開けて「朝刊」を取る不自然さ!(^^)

その後に、まあ色々な展開がありまして、「第三の女」として登場する
シーラに思わせぶりな黒いマニュキュアまでさせながら、真のヒロインが
白尽くめのアリスに移行するところは、文句無しの「確信犯」ですね。(^^)

ロバート・ロッジアも、『女と男の名誉』の後、ロクな役に廻りあってい
なかった様な感があったのですが、この映画をきっかけに役がつきはじめ
るでしょう。
これで起用しないプロデューサが居たら、あきらかに「明きメクラ」です。

2.音楽と映像の合体

これは、トレント・レズナーを起用したことでしょう。
至るところに出てくる、音楽の洪水。それにマッチした映像の凄さ。
音楽に関しては、ユウ様の方が御専門なのでそちらに任せるとして、基本的に
ロック系が苦手な僕でも、「これ良いね」と思わせるだけの力をサントラ盤は
持っていたし、音楽のあわせ方も見事でした。

3.訳の分からないまま終わってしまうにも係わらず、不快感が無いこと。

これまで魅せられたら、あとは筋書きはどうでも良いような気がしてきたぞ。
と感じさせた力量は見事。申し訳程度にラストで謎解きをするのだが、それは
御愛敬と言うものでしょう。

まあ、これは観る人を選ぶ映画だと思う。嫌いな人はとことん嫌うし、好きな
人はとことん好きになる映画である。

最後に、くだんの姐さんの一言で締めたいと思う。

「リンチはこの次、全然違った映画を作るよ」と。

大倉 里司( HCD05016@niftyserve.or.jp)

BGM:オリジナル・サウンド・トラック『ロスト・ハイウェイ』

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